第3章
1節―最果ての宮―
帰る理由
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込む。
だが、表情には出さず無表情のままソウヤは話し終えるとすぐさま立ち上がり玄関へと歩みを進める。
玄関へ付いた時、後ろから老人の声が聞こえた。
「なぜ、お主はそこまでして早く出たがるのじゃ?」
「それは――」
ソウヤは思っていた言葉を出そうとして、急に止まる。
「お主が異世界人で、元の世界に戻ろうと躍起になっているのは知っておる。じゃが、正直お主がずっとこの迷宮に留まっていても誰かが元の世界に戻してくれるのではないか…?」
もし、36回目の『軍勢の期』によりボスを打ち破ったなら…元の世界に戻れるのだろう。
正直ソウヤの力がなくともボスは打ち破れるようになっている…否、なっていなければ元ゲームとしては成り立たないのである。
別にソウヤの力は必要なく、ここにいれば帰れる…そう老人は言っているのだ。
「…それに、抜け出す意味などどこにあるのだ?」
「…!」
老人の言葉にソウヤは言葉が詰まる。
息が出来なくなり、体が震えるのをソウヤは感じた。
「抜けだしたとしても、そこにあるのはお主の居場所がない世界じゃ。家族も居なければ家もない。簡単に人は死に平気で生物を殺す世界に…お主は戻りたいのかの?」
その言葉は、ひどくソウヤの心に釘を打つものだった。
初めは日常が暇で…非日常で暮らしてみたくて…そして異世界に行けると思った時、酷く心が高鳴ったのをソウヤ自身覚えている。
ただ、非日常というのはソウヤが思っているほど優しくなく、目を開けたら巨大な魔物に追い掛け回され普通ならありえない身体能力をも手に入れた。
よくある小説のように主人公補正などかかっていないし、毎日のように魔物を殺し殺されかける生活を繰り返していた。
誰も優しくはしてくれない孤独な森のなかでソウヤは酷く後悔したのだ。
そして…それから長い間後悔に悩まされ、強敵とばかり合ってそのたびに意識が吹っ飛んだ。
それほどの苦難の道のりを、必死にもがいてまで戻りたいというのだろうか。
―普通なら、思わない…な。
だが、無性にソウヤ自身その世界に戻りたがっている。
理由は分からない…だが、早く戻りたくてしかたがないのだ。
ソウヤは、思わず首の後をカリカリと掻き…何か金属の感触が手から伝わる。
「あ…」
そして、思わずソウヤは口から声が漏れる。
その金属の感触を伝うと、ペンダントがソウヤの服の中から現れた。
それはルリ、エレン、レーヌ、ナミルが協力してソウヤの誕生日に作っていたペンダント。
ペンダント…と言っても宝石があしらっているわけでもなく、盾型のペンダントの中心に魔法陣が刻まれた石があるだけだった。
ソウヤがこの世界にきて…初めてのプレゼントだっ
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