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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十六話 新人事の波紋
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何の実権もないのだ。儀式、式典に出席する事だけが仕事だ。これで用兵家としての能力に溢れている、司令長官としての“威”を持っている、そんな事が有るはずがない。
「酷い人事か……、彼が予想外の切れ者という可能性は?」
「有りませんね」
俺が断言するとワイドボーンとヤンは顔を見合わせた。
有りえない。彼が有能なら幕僚総監などという何の実権もない名誉職に就いているはずが無い。それにヴァンフリートの敗戦後もミュッケンベルガーが司令長官職に留まっている。クラーゼンに力量があるのならその時点で彼が司令長官になっていてもおかしくないのだ。
そして今回の人事も決定まで時間がかかりすぎている。クラーゼンに宇宙艦隊司令長官としての能力が有るとは帝国軍の上層部は思っていなかった。大揉めに揉めて決まったのだろう。
或いはエーレンベルク、シュタインホフに疎まれている、そういう事が有るのかもしれない。それゆえに司令長官就任までに時間がかかったという可能性も有る。だがクラーゼンが有能だという可能性は無い。
原作を見れば分かる。フリードリヒ四世死後、貴族連合も総司令官にメルカッツを起用しているが、クラーゼンが有能なら彼が総司令官になっていてもおかしくは無い。だがクラーゼンは何の動きも見せていない。おそらく周囲は誰もクラーゼンに利用価値、つまり軍事的な才能を見出さなかったのだろう……。
「本当に無いか?」
ワイドボーンが俺に念押しをしてきた。面倒だが答えるか……。
「有りません。ヴァンフリートの敗戦後もミュッケンベルガー元帥が司令長官職に留まっています。そして今回の人事も決定まで時間がかかりすぎている。いずれも彼が宇宙艦隊司令長官に相応しくないことを示している……」
少々端折ったが十分だろう。あんまり説明したくないんだよ、妙な目で俺を見る奴が必ず出るからな。俺の答えにワイドボーン、ヤン、バグダッシュが顔を見合わせた。
「となるとクラーゼンはどう出るかな」
「実績を挙げて地位を盤石なものにしたいだろうね」
「早急に軍事行動を起こすという事ですか」
おそらくそうなるだろう、ワイドボーン、ヤン、バグダッシュの会話を聞きながら思った。クラーゼンは必ず出撃してくる。
「バグダッシュ大佐」
「何です、ヴァレンシュタイン准将」
「情報部でミューゼル少将の動きを追って下さい。クラーゼンとの関係はどうか、遠征軍に参加するのか……、それとクラーゼンの総司令部に誰が居るのか、それが知りたい」
「分かりました。調査課の尻を叩きましょう」
「それと、帝国軍の遠征軍の艦隊編制、将官以上の地位にある人間のリストを」
「……分かりました。必ず用意させます」
バグダッシュが緊張した声を出した。おそらくヴァンフリートの事を思い出したのだろう。
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