第2章
3節―始まり―
歯車の狂い
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体が息を吹き返したように熱くなった。
「ん、んぅ…」
そして…1週間ちょっと、まさに眠り姫と化していたエミアが…今覚醒をした。
エミアの吸い込まれるように美しい赤い瞳がそっと暗闇から顔を出す。
そして、驚くように目を一瞬揺らすと静かにベッドの横に座るミラジュと老人を見つめた後…。
小さく可憐なその口を開けて――
「ちち、うえ。エミ…コ?」
――掠れた声だが…確かに発声した。
ミラジュの涙が一気に溢れそうに瞳にたまる。
そして、すぐさまエミアに抱き付いた。
ソウヤは空気を読んでか、エミアの意識が覚醒した途端部屋の隅に移動している。
部屋を出ていかないのはそうミラジュに頼まれてからであった。
「ちち、うえ。ちちうえっ!!」
まだ、覚醒して時がたっていないせいか舌足らずな声で父を呼び…1週間とはいえ放置していた筋肉を酷使して抱き付く。
老人…エミコ―漢字で書くと咲子だろう―はそれを微笑ましい顔でそれを見ていたが、目に涙が少したまっていた。
ソウヤもそれに気付いていたが、あえて何も言わず静かにほほ笑むだけである。
そんな、暖かい空気がその部屋を充満していた。
「本当にありがとう。ソウヤ殿。娘を救ってもらって、御もてなしぐらいしか出来ることはないが」
「別に大丈夫だ…というよりそれだけでもありがたく思っている。ここまでおいしい飯は滅多に食えないからな」
あれから1時間後、目一杯泣いた親子は満足するとソウヤたちの自己紹介がてら昼飯をいただくことになった。
なお、調合だけに丸1日かかっているのでほとんど物はミラジュを含め誰も食べていなかったのである。
エレン達も自分たちだけは…と言って食べていなかったようであった。
そのせいか、昼飯は意外と量が多い。
「では、さっそく自己紹介をしていこう。まずは僕からのほうが良いかな?まぁ、みなさんの知ってのとおり、このエルフの国を纏める王…ミラジュだよ。もっともこれは愛称なんだけどね」
ミラジュはそう言ってお茶目にウインクしてみせた。
王の威厳が全く無く、エレン達もあきれ顔になっている。
「では、次は私なのです。私は第三王女のエミアと申しますのです。今回は皆さんにご迷惑をお掛けしたことを、本当に申し訳なく思うのです。そしてソウヤ様、今回は貴重な霊葉を使ってしかも丸一日かけて霊薬を作っていただいたと、たくさんのお礼を申し上げたいのです」
「別にいいですよ。この国に貸しを1つ。それだけで私は十分ですので、エミア様が気遣う必要は全くないですよ」
仕切りにエミアが謝ってくるのでソウヤは少々、強引ながらもエミアを納得させた。
途中からエミアの言っていることが訳が分からな
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