第1章
3節―平穏を裂く獣―
強者と弱者
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らけで、逆に肌色をしている部分のほうが少ないのではないかと思わせる。
―間に合え…!
ソウヤはソク老人の首元に手を当て、微弱ながら生きていることを確認すると即座に自身が今出せる最高の水魔法で回復をおこなう。
先ほどまで回復していたルリとは一目で違うほどの光を放ち、ソウヤの手にとどまり続けている水はソク老人を癒していった。
だが、一向に良くなる傾向はない。
「――――」
回復しながらソク老人の身体を確認していると、ソウヤは気付く。
――もう、手遅れなのだと。
ゲーム世界ではHP0は“死”と認知されがちだが、それは詳細に言えば違う。
HP0はあくまで“行動不可能”と見なされた時の状態なのだ。
そしてソク老人は今、ゲームでいうところの“HP0”に相当する。
簡単に言ってしまえば、死の数分前の状態だ。
この状態で回復してもHP0から変わらなく、助けるためにはソウヤの水魔法の熟練度では足りない。
「くそっ…!」
なんとかならないのか…とソウヤは考えを巡らせる。
ソク老人はソウヤにとって、殺伐としていた世界に一筋の平和を見せてくれた恩人なのだ。
そして、思いつく限りの“最善の方法”。
「『我、強き者。我の導きに答えよ。我、弱きを護る者。我の言葉に答えよ」
誓いは捨てる。
祈りも捨てる。
求むは救う力。
歩むるは近く。
道は遠く短く。
これは、ソウヤが求める“救い”。
「我、汝の魂に誓い力を得ぬ。汝、我の声と共に黄泉へ逝け』」
その恐怖を知り、人を救おう。
その悲哀を感じ、人を救おう。
その慟哭を聞き、人を救おう。
その暗闇を見て、人を救おう。
その巨壁を越え、人を救おう。
それが、ソウヤが誓った“救い”。
強者はただ破壊するのではない、人を救う為に破壊するのだ。
故に強者は常に弱者の救済者である。
故に弱者は常に強者の指揮者である。
そして、“強者”は救済する。
それが誰に対してか、それさえもわからず。
「――力を貸せ、亡霊。『亡霊解放』…!」
瞬間、湧き上がるのは圧倒的力。
その力に向けるのは、強化された魔力。
全MPを使い切る覚悟でソウヤはソク老人に魔法をかける。
だが、足りないのだ。
魔力が強化されてもこの世界のルールは越せない。
越せない、はずなのだ。
―届かない。なんて思わせない、言わせない。
なぜなら、誓ったのだから。
救うと。
助けると。
力になると。
これで何もできないのならば――
「ッぐ…!」
――ソウヤは黄泉へ送
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