第1章
3節―平穏を裂く獣―
儚い平和の時
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則《チート》”だ。
そんなこんなで、現在ソウヤがルリの家で居候し始めて1週間が経とうとしている。
元々変なところで女子力が高かったソウヤは、家事全般を四苦八苦しながらもこなしていた。
ルリと大木の幹を背負っているソウヤが、ルリの住む家に帰ってきたところで声がかかる。
「おぉ、ソウヤ君とルリか。おかえりなさい」
「義父様、寝ていてください…!」
曲がり切った腰に、光を失った瞳。
艶やかさの感じられない白髪。
それが、ルリの父だった。
ルリが外にいる父を見つけると、慌てて体を支え家の中へ連れて行く。
それを見送ったソウヤは、大木の幹を家の前の少し大きな広場に置くと周りを見渡す。
ここは小さな村だ。
小さな畑。
小さな家。
小さな道。
それが特徴ともいえる、そんな村。
小さい村の中でも、この家だけはまるで隔離しているかのように離れて建っていた。
―考えられるのは、やっぱりリクさんの…。
ルリの父…リク老人は、ひどい病気を患っており生気というものを感じられないほどにまで弱っている。
病気の感染を恐れて、事実この村の人々は隔離しているのだ。
それに、助けようにも助けられる人はこの村にいない。
いるはずもない、ここはあくまで“小さな村”なのだから。
―せめて、俺が水魔法使えたらな…。
ソウヤの水魔法ならば、完治は無理でもその燃え尽きようとしている命の灯を繋ぐことはできる。
だが、それを塞ぐのは“スキル使用不能”の文字。
魔法系列もスキル――特徴能力の1つであるため、使用することが出来ないのである。
「早く、治れよ…」
吐き捨てるようにソウヤは小さく零すと、ルリ達のいる家へと向かう。
この世界に来て、初めての平和なときを噛みしめながら。
その日の夜、ソウヤ含め多くの人が眠りへと誘われている頃、ルリとリク老人だけは起きていた。
リク老人は相変わらず生気のない姿だが、その声だけは唯一力に満ち溢れている。
「ルリや、ソウヤ君をどう思うかね?」
「どう思う…ですか?」
ルリは唐突に尋ねられた問いの真意を把握できず、しばらく言葉に詰まっていると…ある“結論”に至った。
その瞬間、ルリの表情が一気に硬いものとなる。
「まさか、義父様!彼が…」
「多分…じゃがの」
まさか、と思いながらも返す言葉が見つからないルリ。
それはまさしく――
「――ソウヤ君はの、明らかに“妖精の力”として逸脱しておる」
「…わかっている、つもりです」
今朝だって、ソウヤはルリと同行し木材集めを手伝った際に、炎の妖精でも持つ
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