第1章
2節―狂炎と静炎の円舞―
『亡霊解放』
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「『軍勢の期』が全滅したじゃと!?」
それから次の日の朝。
夜に放った偵察兵が返ってきたとともに、返ってきた言葉は予想外だった。
「我々が向かっていた森は焼け野原となり、『軍勢の期』もそれに焼かれ全滅していました」
―まさか、ソウヤ殿が一人で…全滅させたというのか?1万の魔物を?
王は、あまりに常識外の現実に瞳孔を大きく開ける。
だがすぐさま意識を取り戻すと、大事なことが聞けていないことに気が付いた。
「ソウヤ殿はどうした?まさか…」
「いえ。我らが隅々まで探しましたが、遺体どころか物1つ残っていないのです」
それはつまり、生きている確率が非常に少ない…ということを指す。
報告した偵察兵から現状をある程度聞くと、王は偵察兵を戻らせ大きくため息をついた。
重い空気の中、真っ先に口を開けたのはライトである。
「――王、心配なさらず」
「…ライトか」
ライトは軽く頭を下げると、口元を緩めた。
「アイツほど、生き残りそうな奴を僕は知りません。どうか気落ちのせぬよう」
「そう…だな。吉報を待とうかの」
「はっ、賢明かと」
そう言いながら、この中で最もその事実に驚いていたのはライトである。
―シュリードはプレイヤーの中でも精鋭中の精鋭をフルレイドで、ギリギリだったボスだ。良く倒せたな、というレベルじゃない。
最強を担うプレイヤーが64人集まって、3回目の『軍勢の期』を防いだ記憶がライトにはあった。
それで分かる通り、ライトは元αテスターである。
ゲームをこよなく愛するライトは、“FTW”にハマり最強のプレイヤーの一角を担っていたほどだった。
だからこそわかるのである、シュリードの強さを。
αテスト内でシュリードと相対するとき、まず必要なのは魔法攻撃に強い耐性を持つ装備と、魔法ダメージを軽減する土魔法だ。
それを揃えたうえで、HPが300を超えていなければまずあの火球で即死は確実なのである。
今でこそプレイヤーであるはずの妖精は、“特殊能力”を所有しているため、そこまでは余裕だろう。
だが、ゲームとは全く違うところが多すぎるのだ。
3人称が1人称になり、自分の思った通りに自分自身が動くしかなく、魔法もコンソールからの選択ではなく詠唱からの発動。
なにより、“命の重み”が出てしまったのが辛いところである。
これが現実となってしまった以上、今HPがゼロになったらそれは“死”を意味するのだ。
それが判断を鈍らせる。
だが、それをソウヤは超えてしまった。
―いくら能力が虎でも竜は倒せない…はずなんだけどね。
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