第18話『亡霊の悪鬼〜テナルディエの謀略』【アヴァン】
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夢――それは生命体が出でた瞬間、持ち合わせた最大の欲求だ。
自らの種の存続を求めて、生命は自らを維持するために行動し、繁殖し、抗争を繰り広げる。
国という大樹も一つの生命体である以上、それらの論理行動がすべて当てはまる。
『人』――『貨幣』――『土地』――『資産』――それらは全て『国』が生きていくためには欠かせない必要な栄養素だ。
ムオジネルがアニエスを襲ったのも、奴隷という名の『資産』を得て国が生命としての営みを継続させるために―――
どの国にせよ、より豊かな土地を求めて戦い、自らの後継者を守って戦い、それらは全て生命体がこの世に生まれ出でた時に刷り込まれた行動。
国によってこそ差異はあるものの、『夢』という幻想的衝動に突き動かされている点はブリューヌもジスタートも同じだ。
守るために――勝つために――
火を獲得し、鉄を溶かして槍を生み出し、やがて『銃』を作り出す時代となった今でも、フェリックス=アーロン=テナルディエはなおも求め続けていた。
もっと強く――強く――聖剣デュランダルを、竜具を超える獅子の力を――と。
それらは全て、数多の生命の種に対して勝ち残り、他者を圧倒したいがために。
鍛え上げた国力で小国を攻め滅ぼすこと。己の強さに酔うことは何よりも抗いがたいものだ。
国民国家革命軍『銀の逆星軍―シルヴリーティオ』
この地上にもはや天敵がいなくなったとしても、フェリックス=アーロン=テナルディエはさらなる高みを目指した。
それは、黒騎士を超える武勇を――
それは、戦姫を超える竜の技を――
それは、勇者の全存在を肯定する魔王の強さを求めることに、彼はずっと飢えていた。
国は大樹にして丘。しかしその案内役である『先導者』次第では、大樹に『捻じれ』を見せて思いがけない場所へ人を着地させる。
増えすぎた人口は大地を腐らせ、万物の生滅においやろうと自覚していても、なお『夢』を追いかけることをやめない。
『魔』を降したあと長い文明創造の期間を終え、竜さえも駆逐できる今となっては『人』を脅かす天敵など無いに等しい。天敵を失った人類は、『国』を互いの敵と認識し、連綿へと続く戦火は涙と悲しみを呼び求めた。
それが……『強欲』の果てに『夢』みた『人』の末路なのだろうか?
それとも……たどり着いた『丘』の結末がこうなのか?
弱肉強食もまた、避けられない摂理のひとつであった。人は己こそ優れた種だと信じ、残すことを望む。結局、それは生命体が刷り込まれた本能であるが、花を摘み取るような感覚で生命を刈り取ることが、進化の摂理であるとは言いにくい。人はすぐさま本来の姿、あるべき姿から外れてしまう。
『人を超越した力』――――
人と機械のはざまで揺れ動く、獅子王凱のように――
人と魔物のはざまで
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