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魔法の調味料
第四章

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「オレンジも砂糖もな」
「寒くて土地が痩せてて」
「そんな場所だっただろ」
「それで胡椒もなかったんですね」
「ああ、だからな」
 まさにそれが為にだ。
「海に出てインド、今のマウリアまで行ってたな」
「大航海時代ですね」
「連中が言うな」
 連合ではエウロパの侵略と蛮行のはじまりとされている。
「その時代だったな」
「はい、物凄い犠牲も払ってでしたね」
「難破とか海賊とかに遭いつつな」
「胡椒を手に入れていたな」
「そういえば」
 ここでだ、リベリオも気付いた。
「胡椒は肉の匂いを消して味を格段によくしますね」
「そうだな」
「今は普通に使ってますけれど」
「その普通がな」
 まさにというのだ。
「エウロパじゃなくてな」
「薬の効果とかもですか」
「あるとか言われていたんだ」
「そうだったんですね」
「まあ実際に漢方薬でもあるがな」
「そこまで有難がられてたんですね」
「実際に高価だった」
 当時の欧州ではだ、この話は最早伝説にさえなっている。
「胡椒一粒が金一粒」
「そこまででしたね」
「だからな」
 それでというのだ。
「魔法の香辛料扱いだったんだ」
「成程」
「連合各国が地球にあった頃は胡椒もな」
「多くの国にあって」
「ない国もそれぞれ香辛料があったな」
「はい」
 生姜なり何なりがだ、日本でも山葵という独特の香辛料があった。
「確かに」
「連中はなかった」
 欧州、当時のエウロパはだ。
「それでだ」
「そこまで言われていた」
「胡椒がな」
「それこそどの店でも普通に使うものが」
「そういうことだ、じゃあな」
「それじゃあ?」
「魔法の香辛料を使った料理をだ」
 それが何かはもう言うまでもなかった。
「ふんだんにな」
「これからもですね」
「作るぞ」
「じゃあ食わせてもらいます」
「その地域、その時代によって料理も違っていてだ」
「はい、時にはですね」
「魔法の品扱いにもなる」
 あまりにも高価かつ貴重でだ。
「そういうことだな」
「全くですね」
「いや、エウロパの胡椒の話は聞いていたが」
 それでもとだ、エルチェは言ったのだった。
「まさかそこまで言われていたとかな」
「魔法の品だの」
「思わなかった」
 こう言いつつだ、エルチェは彼自身が作った賄いを食べた。確かに美味いがそれは彼がよく知っているいつもの料理だった。胡椒を使った。


魔法の香辛料   完


                        2016・10・21
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