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焚書
第四章

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「えらく親に嫌われてるらしいですよ」
「子供が読むからかい?」
「漫画にかまけて勉強しなくなるだの」
「それは子供によるんじゃないかい?」
「あと教育に悪い」
 鳥谷はその細長い、額も若いが広い顔で言った。
「そう言われてまして」
「嫌われてるのかい」
「親に、他にも色々な本が」
「子供の教育に悪いと言われてかい」
「嫌われてますね」
「おかしな話だね」
 ここまで聞いてだ、織部は首を傾げさせて言った。
「それはまた」
「部長もそう思いますか」
「うん」 
 実際にとだ、彼は鳥谷に答えた。
「本当にね」
「やっぱりそうですね」
「どんな本でも読めばいいんだ」
 織部は自分の考えをここでも言った、今は二人で電車の中にいる。仕事の話をしに相手のところまで二人で向かっている最中なのだ。
「別にね」
「いい本か悪い本かは」
「読んだ本人が決めてね」
「悪い本はですね」
「そう思ったら読まない」
「それで終わりですね」
「そうだよ」
 まさにというのだ。
「嫌って子供に読むなとかは」
「言うべきじゃないですか」
「それはね、ましてやね」
「読むのを禁じたりとかはですね」
「それはよくない」
「昔と一緒ですか」
 鳥谷は少し遠い目になって言った、その目には電車が通っている線路沿いにある家々や木の電柱がある。
「それこそ」
「そうだね」
「俺あの戦争は別に」
「間違ってなかったというんだな」
「まだ子供でしたけれどそう思ってました」
「あの戦争で親父さん右手なくなったんだったな」
「陸軍でパイロットでしたがね」
 それでもというのだ。
「右手なくなってもう飛行機には乗ってません」
「それでも自衛隊にいるな」
「はい、ですがするしかなかった戦争でしたね」
「ああ、しかし検閲が厳しかったのはな」
 そのことについてはだ、織部はこう言った。
「嫌だったな」
「部長としては」
「また民主主義になったんだ」
「それならですね」
「そんな馬鹿なことは繰り返したら駄目だな」
「全くですね」
 部下とこんなことも話していた、彼にとっては嫌な話だった。そして。
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