第四章
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「あの大きさなら」
「猿ならか」
「それで猿なら中に入って」
その土蔵の中にというのだ。
「盗んで外に出る」
「猿ならか」
「出来ますよ」
こう庄屋に言うのだった。
「本当に猿なら」
「おい、猿というが」
庄屋はすぐにだ、平四郎に言った。
「あそこに入ってか」
「悪戯でもしていてです」
「掛け軸もか」
「持って行ったのでしょう」
そうだったというのだ。
「おそらく」
「まさか」
「では中に入ればわかります」
「土蔵のか」
「多分糞があります」
「猿のか」
「はい、鼠の糞だけでなく」
この生きものは何処にでもいる、人が絶対に入ることが出来ない土蔵の中にもだ。流石に鼠ばかりはどうしようもない。
「猿のものもありましょう」
「では今からだ」
庄屋は平四郎の言葉を聞いて今度はこう言った。
「中に入りだ」
「土蔵のですね」
「調べる、いいな」
「はい、猿の糞があれば」
「鼠のものより大きいなあ」
「そして人のものより小さいです」
平四郎は庄屋にこのことも話した。
「わしは山で色々な獣の糞も見てきまして」
「猿の糞も見てきたか」
「だからわかります」
そうだというのだ。
「猿のものも」
「ではこれから土蔵の鍵を開ける」
「そして中に入って」
「確かめるぞ」
「はい、猿の糞があるかどうか」
こう話してだ、そのうえでだった。
庄屋は自分から鍵を持って来てそうしてだった。土蔵の鍵を開けて平四郎と共に土蔵の中に入った。土蔵の中は整頓されているがだ。
埃が積もっていた、そうして。
糞もあった、小さな糞だけでなく大きな糞も幾つかあった。平四郎はその糞を見て庄屋に言った。
「この糞がです」
「猿の糞か」
「はい」
平四郎はその糞を指差して話した。
「間違いありません」
「そういえば大きな糞があると思っていた」
「鼠の糞にしては」
「うむ、しかも形も違うしな」
鼠のそれとはというのだ。
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