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土蔵の宝
第三章
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「気になるな」
「何なら見てみるか?」
「庄屋さんの屋敷に行ってな」
「そうしてか」
「その土蔵を見てみるか」
「ああ、どんな土蔵かな」
 平四郎はまた言った。
「見てみたいな」
「じゃあ今から庄屋さんのところに行くか」
「その掛け軸だけ盗まれたらしい」
「じゃあそこに行ってな」
「見てみるといい」
「そうするな」 
 平四郎はあっさりと答えてだ、そのうえでだ。
 実際に庄屋の屋敷に行ってそうしてだった、庄屋に話をした。すると庄屋は平四郎の面長のあまり鋭そうではない眉がやけに太い顔を見つつ言った。
「御前さんが来てもな」
「仕方ないって言うんですか?」
「御前さんは山だろ」 
 だからだというのだ。
「山のことは何でも知っていてもな」
「掛け軸はですか」
「あまり字は得意じゃないだろ」
「昔から学問は苦手で」
「誰が興味があって盗みかねないかな」
「とんとあてがありません」
「そんな御前さんが来てもな」
 庄屋や眉を顰めさせ口をへの字にさせて首を右に捻って述べた。
「何もな」
「ないっていうんですか」
「そうだよ、けれど土蔵を見たいっていうんならな」
 それならとだ、庄屋は今度は平四郎の猿の様な身体を見て言った。背丈もわりかし小さく山で動くには向いている感じだ。
「いいさ」
「それじゃあ」
「ああ、こっちだよ」 
 庄屋は平四郎を屋敷の敷地の中にあるその土蔵のところに連れて行った、そしてその如何にも頑丈な土蔵を見せて話した。
「この中は他は古いを入れた箱ばかりでね」
「掛け軸以外はですか」
「そういうのばかりなんだよ、ただ掛け軸だけは箱に出してあったのがまずくて」
「盗まれたんですか」
「この通り穴なんて何もないのにだよ」 
 見れば白い壁は厚くかなり頑丈そうだ、まるで城の壁である。
「天井もな」
「穴がなくて」
「誰も入られる筈がないってのに」
 それでもというのだ。
「掛け軸は盗まれたんだよ」
「それは不思議ですね」
「そうだろ、どうしてかな」
「こんな土蔵なら地震でも崩れないですね」
「むしろ屋敷よりもな」
「頑丈ですね」
「そうだろうな」
 庄屋も平四郎に話す。
「ここはまた別だ」
「そんなところからどうして盗めたのか」
「だからわしも皆も不思議がってるんだ」 
 庄屋は自分の隣に呑気な感じで立っている平四郎に顔を向けて言った。
「それでだ」
「そうですよね」
「全く、どういうことか」
「窓も小さいですし」 
 平四郎は土蔵の窓も見た。
「人が入られる大きさじゃないですね」
「ああ、とてもな」
「囲いもないですし」
「あそこなら雨も土蔵の中に入り込まないしな」
「そうですね。ただあの大きさなら」
「何だ?」
「猿なら
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