第五章
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「この通りうちは弱小だ」
「ご自身で言われていましたね」
「何とか試合に出られる位だ」
「五人で」
「そんな有様だ」
岩崎はこのことは笑って言った。
「それで御前が来たが」
「入れとかはですね」
「そうして欲しいがな」
「俺の自由意志ですね」
「好きにしろ、しかしな」
「しかし?」
「よく来てくれた」
岩崎はここでにやりと笑ってだ、哲承に言った。
「空手部までな」
「気が向いたからですけれどね」
「しかしよく来てくれた、それでだが」
「俺に話したいことがあるんですよね」
「そうだ、更衣室の中で話すか」
こう言ってだ、岩崎は哲承を道場の横にあるその更衣室に案内した。更衣室の中は和風のもので木造の服を入れる場所があってだった。
机と椅子もあった、岩崎は哲承にその椅子の一つを差し出して座る様に言ってからだった。彼もまた座り。
そのうえでだ、向かい合って話をした。
「話は聞いている」
「俺の話をですか」
「大変だったな」
「正直に言っていいですか」
にこりともせずだ、哲承は岩崎に確認を取った。
「その時の気持ちを」
「ああ、言ってみろ」
「地獄でした」
偽らざる本音だった。
「目の前が真っ暗になりました」
「絶望でだな」
「そうなりました、周りからも言われて」
「その様だな」
「今は言う奴はいないですが」
「むしろ声をかけられないな」
「俺も声をかけないです」
壁を築いているのだ、これ以上はないまでに高く厚く堅いものを。
「誰とも付き合いたくないですから」
「言われたからか」
「はい、そうです」
「傷付きたくないか」
「そうですね」
哲承は岩崎のその指摘を否定しなかった、まさにそうだと答えた。
「本当に」
「それで痩せたか」
「太っているから嫌だって言われましたから」
それで振られたからだというのだ。
「今も必死です」
「努力したな」
「努力かどうかはともかく」
「痩せてか」
「この体型を維持する様にしています」
「それはいいことだ」
ダイエットについてはだ、岩崎も肯定した。
「御前がそうしたいならな」
「そうですか」
「そうだ、しかし言ったな」
「心もですか」
「むしろそちらは痩せ過ぎだ」
そうした状況だというのだ。
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