第一章
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痩せてみると
八条学園高等部普通科の一年生茅野哲承は体重百キロを優に超えている、かなりの肥満であることは言うまでもない。背は一七五あるがその肥満は誰が見ても明らかだ。
それでだ、クラスメイト達からはいつもこう言われていた。
「御前本当に太いな」
「あまり太ってるとよくないぞ」
「身体にな」
「少し痩せたらどうだ?」
「いや、そうも思ってるけれどね」
言われても返事はいつもこうだった、肥満しきったその顔で笑って。いつも汗を流していてかなり暑苦しい。
「御飯も美味しくて」
「油もの食い過ぎじゃないのか?」
「甘いものとかな」
「そういうの注意しろよ」
「太ってるとな」
「暑苦しいだろ」
「運動も出来ないしな」
実際にだ、哲承は体育はいつも駄目だ。学校の勉強はそこそこだがそちらは本当にからっきしだった。だがそれでもだ。
彼は太ったままだった、だがその彼は。
同級生の宇野彩友美を好きになった、彩友美は小柄でおかっぱの楚々とした感じの少女だった。目は大きく垂れ目だ。
哲承の完全なタイプだったのでだ、ある日だ。
放課後校舎裏に呼び出して告白をした、しかし彩友美は。
告白を受けた瞬間にだ、哲承をこれ以上にないまでに蔑んだ顔で見てだ、こう言った。
「あんた何言ってるのよ」
「えっ!?」
「何であんたみたいなデブと付き合うのよ」
こう言ってきたのだ。
「馬鹿言わないでよ、あんたみたいな汗臭い暑苦しいデブ見るのよ嫌よ」
「そんな・・・・・・」
「二度と話し掛けないでよ」
汚いものを見る目での言葉だった。
「近寄らないでね」
こう言ってだ、踵を返して彼の前から消えた。哲承はその場に呆然となって立ち尽くした。
この日どうして帰ったかわからなかった、そして部屋に閉じ篭ったまま朝までベッドの中でうっ伏した。そして。
次の日からだ、彼はこの告白のことをだ。
多くの者から囃し立てられた、黒板にも書かれ学校の裏サイトにも書かれた。特に女子それも彩友美の周りの者達は。
彼のところにわざわざ来てだ、口々に言ってきた。
「あんたみたいなデブが彩友美ちゃんに告白するなんて何様よ」
「彩友美ちゃんに失礼でしょ」
「デブの癖に女の子に告白しないでよ」
「デブはデブらしく養豚場に行きなさいよ」
こう口々に言ってだ、学校の帰り道に待ち伏せをして陰口まで叩く始末だった。
哲承はすっかり落ち込み誰とも喋らなくなった、そしていつも俯いて一人でいる様になった。だがある日のことだ。
朝早く起きてジャージ姿で走りはじめた、そのうえで。
「お菓子もういいから」
「食べないの?」
「うん、お肉もね」
母親に言うのだった。
「お野菜とお魚だけでいいから」
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