10,八双飛び
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<ヤヨイ視点>
疾い。
数日前なら笑ってあり得ないと断じれる光景が、私の前には確かにあった。
スピードだけならあの二人組ーーイスケとコタローの方が僅かに速い。だけど、ステータスで負けている筈のクロウさんは別次元の疾さで動いている。
移動は近くにある障害物や木を足場にするため、三次元的で飛んでいるかのよう。
気付いた時には接近していて、反撃しようとした時には既に吹き飛ばされている。
システム頼みではない変則的な三次元戦闘。
もしもこれが、天井で覆われた迷宮区だったら、本当に彼は見えなくなるのではないか?
「ーー何が起きてんだ?」
ふと、我を忘れて目の前の光景を見ていた私は誰かの呟きにハッとして周りを見渡す。
面白おかしい決闘を期待していた全ての人がポカンと口を開けて、目の前の奇跡に釘付けになっている。
「クロちゃん、やっぱりステータスが足りてないナ」
ただ一人、全盛期の彼を知っているはずのアルゴさんだけはこの光景にご不満の様だ。ぶつぶつと先程から文句ばかりを言っている。
「アルゴさん、クロウさんは本当にこれでボス戦に参加していないのですか?」
アルゴさんは黙って三本指を突き出し、そして開いた手を差し出してきた。
300コル、ということらしい。今知りたくて私はコインを出してその手にそっと置いた。
「確かに。まあ簡潔に言えばイレギュラーすぎるんだナ。あの戦闘をボス戦でやってもだーれも援護できないんだヨ」
一回だけ参戦した時に周りのプレイヤーと連携ができなくてそれで自重しちゃったそーダ。とコケティッシュな響きでアルゴさんは締めくくった。
なるほど、確かに口では上手く言えないわけだ。こんなもの見ないで納得なんて出来るわけがない。
「しかしヤー嬢は大変だナ。この戦闘についていかないとダメなんだゾ」
ヤー嬢と呼ぶな。というツッコミも忘れ、私は思わず口を噤んだ。
そうだ、私はあの人はのコンビだ。あの戦闘に割ってはいらないといけない。
自分があの場にいる事を想定して、再び私は目の前の戦闘に再び没頭していった。
<クロウ視点>
−−旋風が通った後は、ダンジョンには塵も残らない。
−−何も無いダンジョンで、モンスターが消滅する。全てが終わった後には突然プレイヤーがリポップする。
ベータテスト時代に俺のプレイングを誰かがこう評したらしい。最速で迷宮区を踏破し、アイテムもモンスターもリソースなら何でも奪い取る。
攻略に勤しんでいた他のプレイヤーからすれば、大事な迷宮でのレアアイテムの半分以上を俺に取られていたのだから、こう揶揄したくなるのも当然だろう。
AGI極振りのリソース泥棒。旋風なんて二つ名はそのプレイスタイルに好意的な人の付けた二つ名で、酷い時に
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