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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十四話 和平の可能性
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だ。
「フリードリヒ四世の死か……。一体何時の事なのか……」
トリューニヒトが呟く。頼りない不確定要因だと思ったのだろう。フリードリヒ四世は未だ十分に若い。今の時点で彼が近未来に死ぬと予測している人間など居ない筈だ。
「皇帝は必ずしも健康ではありません。意外に早いかもしれませんよ」
俺の言葉に三人が顔を見合わせた。実際早くなってほしいもんだ。
「我々が今準備する事は?」
トリューニヒトが囁くような声で問いかけてきた。
「軍を精強ならしめる事です」
「……シトレ元帥の宇宙艦隊司令長官への就任だね」
「ええ」
トリューニヒトがシトレと視線を交わす。互いに頷くとトリューニヒトは俺を見た。
「シトレ元帥を宇宙艦隊司令長官にしよう。後任の本部長はグリーンヒル大将だ。但し、彼は代理という事になる」
なるほど、統合作戦本部長の椅子はシトレのものと言う訳か。これは一時的な処置という事だな。結構、大いに結構だ。その方がシトレの権威はより増すだろう……。
宇宙暦 795年 1月 4日 ハイネセン シドニー・シトレ
会合が終わったのは日付が変わって三十分も経ったころだった。私は地上車で自宅に戻る途中だ。隣にはヴァレンシュタイン准将が居る。地上車に乗ってから彼は一言も口を利かない。ただ黙って何かを考えている。
「何を考えているのかね」
「……未来を」
「未来か、どんな未来かね」
彼が考える未来とはどんな未来なのか、少し興味が有った。和平を結び退役して何かやりたい事でもあるのだろうか……。
「帝国史上最大の裏切り者、銀河史上最大の大量殺人者、私がそう蔑まれる未来とはどんなものかを考えていました」
「……」
冷静な声だった。顔を見たが感情は見えなかった。皮肉を言っているわけではなかった。自分を蔑んでいるわけでもなかった……。
帝国軍を殺しまくる。和平のために殺しまくる。確かに彼は帝国史上最大の裏切り者、銀河史上最大の大量殺人者、そう呼ばれることになるかもしれない……。気が重くなった、そう仕向けたのは私だがそれでも、いやそれだからこそ気が重い。
「元帥」
「何かな、准将」
「宇宙艦隊の司令官を交代させてください。今のままでは信用できません。まともに戦えるのは第五、第十、第十二くらいのものです」
ビュコック、ウランフ、ボロディンか……。確かにそうだな、後使えるのと言えば第一のクブルスリーだが、名前は出なかったな。
「交代と言っても後任者はどうする」
「先ず、ラルフ・カールセン、ライオネル・モートンの両名を艦隊司令官にしてください。後は徐々に入れ替えましょう」
なるほどカールセン、モートンか。両名とも士官学校を出ていないが実力は確かだ。ロボスの失態で下がった兵の士気
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