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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十四話 和平の可能性
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の兵士を殺したか、帝国の軍事費を膨大なものにしたかという事になる。戦死者に対する遺族年金もその一つだ。簡単に言えばアムリッツアを帝国相手に実施することだ。二千万人も殺せばいくら帝国でも当分戦争は出来ない。和平という事も考える可能性はある。

考えなければその時点でイゼルローン要塞攻略を実施しても良い。その上で帝国領侵攻を匂わせる……。或いは辺境星域に対して一個艦隊による通商破壊作戦を実施する。帝国も本気で和平を考えるだろう。問題は本気で帝国領侵攻なんて馬鹿なことをしないことだな。

テーブルの上にはサンドイッチが残っている。皆なんで食べないのかね、残しても仕方ないぞ。俺はインサラータ・カプレーゼをもう一つ頂こう、実に美味い。

「イゼルローン要塞を攻略すれば帝国領への侵攻という最悪の選択肢が待っています。となれば同盟領内で帝国軍の殲滅を繰り返すしかないんです。違いますか?」
「……」

殺せ、ただひたすら殺せか……。なんとも血腥い話だな、うんざりする。血塗れのヴァレンシュタイン……、そのうち赤ワインの代わりに帝国軍人の生き血を啜って生きているとか言われそうだ。

「他に選択肢は無いのかね」
低く押し殺した声でシトレが問いかけてきた。真打登場か、シトレ。
「選択肢は有りませんね、ただ……」
「ただ?」
「ただ……、現時点で帝国には不確定要因が有ります。それによっては別な選択肢が発生する可能性はあるでしょう……」

俺の言葉にトリューニヒト、レベロ、シトレが顔を見合わせた。トリューニヒトがこちらを窺うように問いかけてきた。
「その不確定要因とは、何かね」

「皇帝フリードリヒ四世の寿命です」
俺の言葉にトリューニヒト、レベロ、シトレがまた顔を見合わせた。この三人が全くそれを検討したことが無いとも思えない。だがどこまで検討したか……。

「皇帝フリードリヒ四世は後継者を定めていません。皇帝が死ねば帝国は皇帝の座を巡って内乱が発生する可能性が有ります」
「ブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯か」
トリューニヒトが呟きレベロとシトレがそれぞれの表情で頷いている。やはりな。この三人は内乱を検討している。

「それだけとは限りません」
「?」
「次の皇帝候補者はブラウンシュバイク公爵家のエリザベート、リッテンハイム侯爵家のサビーネ、そしてエルウィン・ヨーゼフ……」

「エルウィン・ヨーゼフ? しかし彼には有力な後ろ盾が無いだろう」
甘いな、シトレ。どうやらお前達は皇帝フリードリヒ四世の死後を検討はしたがブラウンシュバイクとリッテンハイムの内乱で終わりのようだな。おそらくはブラウンシュバイク公が有利、そんなところか。原作知識が有るせいかもしれないが酷く心許ない。

「彼は亡くなったルードヴィヒ皇太子の息子
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