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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十四話 和平の可能性
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トレとトリューニヒトが笑い声を上げた。レベロの顔が歪み、俺をきつい目で睨んだ。睨んでも無駄だよ、レベロ。自分の都合の良いように取るんじゃない。お前ら政治家の悪い癖だ。どうして政治家って奴は皆そうなのかね。頭が悪いのか、耳が悪いのか、多分根性が悪いんだろう。

いや、それよりどうするかだ。和平そのものは悪くない、いや大歓迎だ。これ以上戦争を続ければ何処かでラインハルトとぶつかる。それは避けたい、とても勝てるとは思えないのだ、結果は戦死だろう。戦って勝てないのなら戦わないようにするのも一つの手だ。三十六計、逃げるに如かずと言う言葉も有る。そういう意味では和平と言うのは十分魅力的だ。

「その可能性とは」
どうする、乗るか? 乗るのなら真面目に答える必要が有る……。この連中を信じるのか? 信じられるのか? ……かけてみるか? 血塗れとか虐殺者とか言われながらこのまま当てもなく戦い続けるよりは良い……、最後は間違いなく戦死だろう。

同盟が滅べば俺には居場所は無いだろう。生きるために和平にかけるか……。宇宙は分裂したままだな、生きるために宇宙の統一を阻む。一殺多生ならぬ他殺一生か、外道の極みだな、だがそれでも和平にかけてみるか……。

「准将、どうかしたのかね」
気が付くとレベロが心配そうな顔をしていた。トリューニヒトもシトレも訝しそうな表情をしている。どうやら俺は思考の海に沈んでいたようだ。

「いえ、何でもありません。簡単なことです、殺しまくることですよ、レベロ委員長」
振り返るな、サンドイッチを食べるんだ。周囲を不安にさせるような行動はすべきじゃない。連中に俺を信じさせるんだ。今度はトマトとチーズのサンドイッチだ。チーズはモッツァレッラ、バジリコも入っている。インサラータ・カプレーゼか、これは絶品だな。

「殺しまくるって、君……」
そんな呆れたような声を出すなよ、レベロ。いかんな、トリューニヒトもシトレも似たような表情だ。俺の答えに呆れたという事はこいつら根本的な部分で帝国が分かっていない。分かっていないから和平なんて事を考えたか。知っていれば考えなかったかもしれん。早まったか? 違う、だから俺の知識が必要なのだ! 振り返らずに前に進め!

「全人類の支配者にして全宇宙の統治者、天界を統べる秩序と法則の保護者、神聖にして不可侵なる銀河帝国皇帝……。分かりますか、帝国は対等の存在など認めていないんです。彼らを和平の席に着かせるには帝国軍の将兵を殺しまくってこれ以上戦争は出来ないと思わせるしかありません」

部屋に沈黙が落ちた。俺は極端なことを言っているつもりはない。どんな戦争でも限度と言うものは有る。帝国と同盟の戦争で帝国が許容できない損害とは何か?

同盟領内部で戦うのだから領土は論外だ。となれば後はどれだけ帝国軍
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