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ラインハルトを守ります!チート共には負けません!!
第八十九話 艦隊再編成、そして、次の章の幕開けです。
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ることができた。敵がそれ以上追ってこなかったので、敗残艦隊は再編成を行い、補給と補充、それに第五艦隊が引き連れてきた工作艦隊による修理を行うことができたのである。
 ほどなくして第十艦隊が、そして第十二艦隊が増援として到着し、敗残艦隊を守るようにして展開した。
 どの艦隊も損傷がひどかった。ヤン・ウェンリーの第十七艦隊ですら損害率5割を超えており、第十六艦隊に至っては損害率7割強を記録している。もはや艦隊として機能することがかなわないほどにダメージを受けてしまったのだ。
 人的被害も大きいものだった。150万人強の死傷者は自由惑星同盟にとっても無視できない損害である。

 だが――。

 最も深刻なものは、将兵の心に負った傷の深さだったのかもしれない。目に見えないものだったが、それだけに事態の大きさは深刻だった。「要塞には要塞を。」「新要塞をもってイゼルローン要塞を攻略する。」などと大々的に銘をうった今回の戦いが、自由惑星同盟の敗退になり、何一つ得るところなく引き揚げてしまったことに、ショックと屈辱、喪失感、そして後方の市民への恐怖が前線将兵に疫病のごとく蔓延していたのである。
 軍上層部は冷静にこの大敗北を受け止めていた。何しろ再三こちらの方から戦略的撤退許可を求めたにもかかわらず、国防委員長及び最高評議会がそれを許可しなかったのである。現場の駆け引きは軍が行うが、大略方針は国防委員長及び最高評議会が決定する。文民統制と言えば聞こえはいいが、むろん実態はそれとはかけ離れている。この基本方針の弊害が如実に出たのが今回の戦いだった。
 敗残の司令官たちとそれを迎え入れた救援艦隊の司令官たちは一同に第五艦隊旗艦リオ・グランデに設けられた会議場に集まってきていた。
 第十三艦隊のウィトゲンシュティン中将が参謀長、副司令官、副官、そして副官補佐役のアルフレート、カロリーネ皇女殿下を伴って訪れた時、歴戦の老提督はただ一言、
「よく、帰ってきたのう。」
と、言い、彼女の肩をポンポンと叩いた。日頃不愛想だと評判の老将にしては珍しいこととささやき交わされる声はないことはなかった。シャトルに乗り込んでからここに来るまでずっと硬い顔をして一言も話さなかったウィトゲンシュティン中将は、一言、


「申し訳ありません。」


とだけ言い、頭を下げた。その声に隠し切れない震えが、わずかに漏れ出ていたのを聞いた幕僚はすぐ傍らにいたカロリーネ皇女殿下とアルフレートの二人だけだった。一同が席に着くと、ビュコック中将は開口一番こういった。
「貴官らは後方に下がり、補給と補充、それに艦艇の整備をしてほしい。これまでずっと戦いっぱなしじゃったのだから、後は儂らに出番を譲ってくれてもよかろう。」
それが、ビュコック中将ならではの敗残の将兵に対する慰めだという
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