第四章 RE:BIRTH
四面楚歌
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それを見て、蒔風の顔が歪む。
まるで質の悪いコメディを見たかのような、そんな顔だ。
目の前に見えたのは、まぎれもなく彼が脱出してきたあの施設だった。
目標物の見えないこの荒野。
本来なら幾度も地図と方角を確認して進まなければならない場所だ。
そこを蒔風は一心不乱に走り抜け、さらには送り込まれる戦力も相手にしていた。
そんな状態で、しっかりと離れていくことなどできるはずがない。
彼は気づかないうちに、元の場所に向かって走っていたのだ。
「くそったれ・・・・・」
悪態をつく彼の前方数百メートルの位置から、ガキン!!!という音がして地面から数百以上の砲門がせり出してきた。
それは足元にちょこんとあるような小さなものだったが、先端から飛び出している棘を見ればそれがどんなものかわかる。
そして、その形は蒔風にも見えていた。
「あれは・・・・!! 止めてくれよ!?」
その棘の先端は、刺さりやすく抜けにくいという形をしたものだった。
進行方向とは逆に向いた棘のついた針。そして外見からは見えないが、その針にはワイヤーが取り付けられていた。
ドンッッ!!!
それを見て、施設に向かって蒔風が一気に走り出す。背中を見せたら貫かれる。
と、同時にババババババンッッ!!と一気に拘束弾が射出されてきた。
ワイヤーの尾を引きながら、いくつもが蒔風に向かって伸びてきて、大地に突き刺さった。
そんなワイヤーと針の隙間を蒔風が駆けていると、そんな中でも関わらずバイクやジープが飛び込んできた。
それを転がりながら回避し、横や下を蹴りあげて転がす蒔風。
しかし、針の一つが肩をかすめて皮膚を裂く。
すぐにそこを押さえて血を抜くが、視界が一瞬で揺れて来てしまう。
血抜きは間に合わなかったらしい。何かの毒が、身体を回る。
するとその隙に一瞬だけ針が止み、そしてすぐに百発ほどが一斉に放たれてきた。
蒔風が獅子天麟を背中に構え、背負った状態から力の限り一回転してから投げ放ち、ワイヤーを五、六本逸らす。
その逸れたワイヤーにぶつかって他のが逸れ、連鎖的に多くのワイヤーを食い止める蒔風。
膝が崩れる。
手がつく。
その手で身体を跳ね上げてそれでも前へ。
ドォドォドォドォドォオッッ!!!!
物凄い音を立てて針が地面に突き刺さる。
山なりに、放物線を描いていたそれが、だんだんと地面と水平に飛んでくるようになってきた。
蒔風がそれを紙一重で回避し、どんどん前へ。
足場がワイヤーに埋め尽くされていく。
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