第四章
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サイン会の時にだ、香織はあるファンにこう言われた。
「何か雑誌にですね」
「何かあったんですか?」
香織はその二十歳位、自分より二つ年下に見えるそのファンに問い返した。実は内心見ていけないところが見えているかとひやりとした。
「一体」
「はい、珊瑚礁の場面ですけれど」
「ああ、あそこですか」
「はい、香織さんの後ろ、水平線のところに」
まさにそこにというのだ。
「変なのが見えるんですけれど」
「変なの?」
「はい、これです」
ファンはその雑誌を出してきた、見れば珊瑚礁の中から見事な笑顔を見せる濡れた香織の後ろにだ。
やけに大きな船の影が見える、ファンはその船を指差して言った。
「これ軍艦ですよ」
「そうなんですか」
「しかもこの軍艦旧帝国海軍の軍艦で」
「旧帝国海軍ですか」
「ガダルカナル近海での戦いで沈んだ船ですよ」
こう言うのだった。
「駆逐艦で」
「ということは」
「この写真心霊写真じゃないですか?」
「あっ、確かにな」
「これ海軍の船だぞ」
「あの駆逐艦じゃないか」
「ガダルカナルの戦いで沈んだ船だぞ」
「アメリカ軍との戦いでな」
サイン会に来ていた他のファン達も口々に言う、どうも軍事マニアもかなり来ていたらしい。
「ってことはこれ幽霊船か」
「ここなら有り得るんな」
「そうだよな。
「ガダルカナルだしな」
「こういうこともあるよな」
皆香織をよそに口々に言う、そしてだった。
サイン会の後でだ、この件はネットでも話題になった。それで写真集やDVDでも幽霊船が探されて。
幸い写真集やDVDには幽霊船はなかったが香織自身よりも話題になった、それで香織は事務所で首を捻ってぼやいた。
「何かね」
「今回の事態はっていうのね」
「そうよ、何かね」
どうにもと言うのだった。
「私よりもね」
「そうね、まさか私もね」
芳美もやれやれといった顔で言った。
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