第二章
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「それはね」
「当たり前っていうのね」
「うん、羽根がないとね」
それこそというのだ。
「飛べないよ」
「そうよね」
「逆に言うと羽根が生えたら」
孵化してだ。
「そうなるよ」
「そうよね」
「その時までの我慢だよ」
孵化するその時までというのだ。
「本当にね」
「じゃあ今は芋虫ね」
「見たままのね」
「そういうことね」
私は一人で納得した、そのうえで弟が彼等に餌をあげるのを見た。それから自分の部屋に入って自分のすることをした。
次の日学校に行くとだ、私はクラスで友達の一人実家は昔からの大地主で今もマンションなり駐車場なりを一杯持っている地元では大金持ちで知られている家の娘と話をしている時にだった。
その娘にだ、溜息混じりに言われた。如何にもお嬢様然として気品のあるそれでいで妙に艶めかしいその顔で。
「それにしても」
「それに?」
「いえ、何かとですわね」
言葉遣いにも気品がある。
「動けないですわね」
「そういえばあんたは」
「はい、学校から帰りますと」
つまり家ではというのだ。
「習いごとが多くて」
「書道と華道、茶道に日舞」
「はい」
こうしたものを子供の時からしているらしい。
「お母様が元々家元の娘さんで」
「茶道だったわね」
「それと書道の」
そちらのお家からその大地主のお家に入ったと聞いている、それでこの娘はそのお母さんに昔から躾けられているのだ。
「ですから」
「お母さんになのね」
「いつもですね」
「習い事をなの」
「させてもらっています」
「あんたも大変ね」
「先生の方はどの方も厳しくて」
こうもだ、私に話した。
「あとです」
「あと?」
「合気道もですし」
「護身に」
「心を鍛える為とのことで」
「習い事五つね」
「それが非常にです」
実にという返事だった。
「多くて」
「困ってるのね」
「正直自由が欲しいと思う時はあります」
「それわかるわ、あんたのお家はね」
大地主の家だからだ、この県じゃかなり有力なお家で本当に資産もかなりのものらしい。
「そうしたお家だから」
「自由があれば」
「まあそう言うとね」
「かえってですね」
「言われるからね」
この娘自身はいい娘でお家のことも鼻にかけないしだ、誰からも人気のある娘だ。
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