第四章
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それでだ、寿も言っていた。
「今日は駄目かな」
「あかんあかん、負けや」
「九点差はあかんわ」
「うちのチーム九点差逆転されることはあるわ」
阪神では多いだろうか。
「けど逆転することはないわ」
「いっつもこうなったら負けや」
「そのままあっさりや」
「それがいつもやさかいな」
「今日はあかんわ」
「諦めるしかないわ」
「そうですね」
寿は三塁側を苦い顔で見て周りの黒と黄色の面々に応えた。
「妹三塁側にいますけど」
「ああ、妹さんはそっちか」
「鯉女やねんな」
「今日はあいつのにやけ顔見ますね」
間違いなくだ、そうなるというのだ。
「仕方ないですね」
「今日はな」
「首位もあっちや」
「まあ後で取り返そうか」
「捲土重来や」
「まあ巨人じゃないですからね」
実際に千佳が巨人ファンなら洗脳してでも止めさせるつもりだった、寿はそこまで巨人が嫌いだ。
「いいですけれどね」
「そや、カープはずっとましや」
「頑張ってるしな、お金ないのに」
「兄貴さんの元のチームやし」
「新井さんもおったり今おるしな」
「そうですね、まだええです」
巨人でないからだ、何につけても。
「今日はあいつのにやけ顔見てやりますわ」
「それも兄貴の甲斐性やで」
「カープやったら大目に見んとな」
「巨人やなかったらな」
「まだええわ」
周りもこうした考えだった、とにかく今日は阪神ファン達は諦めていた。だがここからだった。
不意にだ、阪神打線が息を吹き返してだった。
打ちだした、しかもそれが止まらず。
瞬く間に点差を詰めていく、これには千佳も驚いて言った。
「ま、まさか」
「まずいのう、これは」
「阪神急に打ち出したのう」
「どういうことじゃ」
「まさかのことか?」
「逆転か」
「そうされるか?」
彼等は不安に感じだした、それは千佳も同じでだ。
眉を曇らせ難しい顔になってそれで呟いた。
「阪神にそうされるなんて」
「そうじゃ、阪神がされる方じゃ」
「これまでそうじゃったろ」
「逆転されるチームじゃ」
「信じられん負け方するチームじゃ」
「勝った方が驚く位にな」
実際に阪神の試合ではそうした阪神の敗北も多い、記録にも記憶にも残る敗れ方が幾つあっただろうか。
「ウッズに逆転満塁サヨナラホームラン打たれたこともあった」
「最終戦甲子園に巨人にボロ負けしたこともあった」
「バッキーの乱闘もあった」
「日本シリーズの三十三対四は凄かったわ」
「そうしたチームやぞ」
その負け方は伝統だというのだ。
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