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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第二十八話 少女たちの決意 後編
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対面っていう緊張感とか、至近距離だった恥ずかしさよりも、彼の瞳があまりにも冷たかったことに驚いた。

 私が今まで出会ってきた人の中で、あんなにも冷たい目をする人がいるなんて思わなくて、何があったのか気になったのは、思えばあの時からだった気がする。

 この人に何があったんだろうって。

 知りたいと思って、彼と知り合って、彼を知れば知るほど、より知りたくなっていた。

 気づけば小伊坂君のことばかり考えていて、彼の姿ばかりを目で追いかけていた。

 そんな彼の側にいたいって、そう思うようになった。

 知りたい。

 優しい彼が、なんでそんなにも優しいのか。

 強い彼が、なんでそんなにも強いのか。

「……坊主が話さなかった意味が分かってて、それでも知りてぇんだな?」

「はい!」

 力強い意思を声に乗せて発すると、雪鳴さんと柚那さんが小さく微笑んでこちらを見つめてきた。

 それは嬉しそうで、安堵したような、そんな優しさに満ちた表情だった。

 そして二人は互いを見合って頷き合い、雪鳴さんが口を開いた。

「黒鐘には、黒鐘を想ってくれる人が一人でも多く必要。 でも、それは誰でもいいとは思わない」

 雪鳴さんの言葉を引き継ぐように、柚那ちゃんが口を開く。

「高町さんのように、お兄ちゃんに深く踏み込む覚悟がある人が必要なの。 そんな高町さんには、お兄ちゃんのことを知ってほしい。 知った上で、これからも側にいて欲しいの」

「雪鳴さん、柚那さん……」

 小伊坂君を思いやる二人の言葉を聞いて、私は一つの疑問が解消した。

 なんで二人が私のことを優しい表情で見つめていたのか。

 二人は小伊坂君のことを、家族と同じくらいに大切に想っているんだ。

 あれは友達とか親友とか、幼馴染み以上の――――家族の表情だったんだ。

 それが分かると、なぜだか胸が熱くなる。

 家族同然の人から認めてもらえた、必要とされた。

 それがどうしようもなく嬉しくかった。

 ずっと、自分に何ができるのか悩んで、迷ってきた私が初めて認めてもらえた。

 それが嬉しくてしょうがなくて、涙が溢れそうになる。

 でも、まだ泣いちゃだめだ。

 まだ私は、何も出来てない。

 泣くのは全部終わってからだ。

 そう気を引き締めた私は、雪鳴さんと柚那さんと共にケイジさんの方を向く。

「小伊坂君のこと、教えてください」

 深々と頭を下げてお願いすると、雪鳴さんと柚那ちゃんも同じくらい深く頭を下げてくれた。

「……ったく」

 ケイジさんから漏れたのは、呆れ混じりのため息。

 だけどそれは決して嫌悪感が混じったものじゃない気がした。


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