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その日はいつかやって来る
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ない内に、魔族の最大派閥となっていた我々を切り崩す工作が行われ、血が薄れた無能な孫や、曾孫までが担ぎ上げられていた。
 戦いだけが慰めとなった私は、強権を発動して兵力を結集し、介入して来た勢力を全て撃破して行った。 降伏する者は許し、抗う者は全て殺す、この方法で次第に内乱は収まって行った。

 やがて元の8割の部族が私の元に集い、あえて同盟も降伏も受け付けなかったルシオラ一派だけが残った…… 弟のジークと共に。 
 あいつらの最後の砦を包囲した時は、勝利を確信していた。 しかし、略奪と殺戮が始まった時、あいつが出てきた。 
 始めは自分の命と引き換えに、住民を許せとでも言うつもりだろうと思っていた。 だが、あいつと子供達は何かの儀式を行い、気味の悪い聖歌を歌いながら溜め込んでいた文珠を使った。

 そして街が一つ浄化され、数万の塩の柱と、魔族が近寄れない聖地が出来上がった。 あいつの信奉者はその中でのうのうと暮らしていると言うのに。
 あの文珠は、範囲を制限するために使われていた。 またあのバカは殺すのをためらったのだ。 この軍団を壊滅させようともせず、街に入った略奪者だけを浄化した。 生まれてから一度も戦わなかったのと同じように。 

 異端だ、堕落している、奴らは神族にでもなったつもりか? ジークまでがあの中で生きている。 下らない奴を弟に持ったものだ、出て来たら必ず殺してやる。

 それから間も無く、手のひらを返すように寝返る者が続出した。 ルシオラは予告通り、自分の眷属の住む街々を浄化し、被害を恐れた者達は全て奴に恭順して行った。
 やがて… 私は味方の手で捕らえられ、あいつの前に献上された。

「殺せっ!」
「そんな事できないわ、お母さん」
「……」

 あいつもハイブリッドと呼ばれる、1世代目だけに現れる特殊能力を持っていた。 だがルシオラだけはもっと特別だった。 我々魔族を浄化する、天使の力を持っていたからだ。
 魔王の子が天使? お笑いだ、馬鹿げている。 大天使がこの地に降臨したとでも言うのか?

 あいつは始めから全て白い羽を持って生まれて来た。 それからは誰にも見付からないよう、毎日ビクビクしながら黒く染めるのが私の日課だった。
 だがその恩を忘れ、成長したとたん私からあの人を奪い、何人も白い羽の子供を産んで、堂々と城の中を歩かせた。 この内乱も、あの人が死んだのも、全てお前のせいだ、絶対に許さない。

「お母さん… 最後に一つ、お願いがあります」

 そこでルシオラに、人間界で小さな事件が起こっていると教えられた。 いつの間にかこの城を抜け出していた九尾の狐が人間界で暴れていると言う。 こちらの内戦に比べれば小さな事だが、道理でどの派閥でも奴を見掛けなかった訳だ。

 奴は傾国の
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