§1 魔王になった日
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翼を持つ者が2人、アルプス山頂付近で剣戟を繰り広げていた。漆黒の翼を持つ者は片腕を失い、純白の翼を持つ者は片目を失っている。全身の負傷具合は両者とも同程度といったところか。
「バラキエル、そろそろ倒れろ」
「ナメんなサリエル、俺様の悪運が火を吹くぜー!!」
バラキエルは叫びサリエルへ突撃する。相手の剣を体で受けて、右手の剣で相手の瞳を切り裂く。全ては相手の邪眼を封じる為。
「ぐぉぉ……!?」
体で受ける、という狂気じみた行動を予測できなかったサリエルは両目を切り裂かれたが故に、バラキエルに実は致命傷を与えていることに気づいていない。
「へっ、ざまぁねぇなサリエル。いくぜ、このバラキエル様一世一代の大博打ぃー!!」
瀕死となってまでバラキエルが狙っていた切り札。召喚術。
ただし、彼の術はひと味違う。何を呼び出すかわからないのだ。それは石ころかもしれない。子犬かもしれない。神々かもしれないし雑誌かもしれない。そして、この召喚術の真価は対象を呼び出す際に時空を超越すること。過去、現在、未来。そのいずれかから何かを呼び出すのだ。それはまさにハイリスクハイリターン。代償は己の命の一部。瀕死の彼のなけなしの命が、全て賭金へと変わる。
賭博で有名な彼は最後の最後まで一攫千金を目指して果てた。
薄れゆく意識の中、彼が最後に聞いたのはマヌケな声。最後に感じたのは、何かが自分の上に落下した感触。
「寒っ……」
黎斗が意識を取り戻したのは、身体に冷たい何かが積もってきたからだった。うっすらと目を開ければそこには雪。田舎だった地元に匹敵するか、それ以上の量の圧倒的な、雪。
「な、なんでこんなに雪……?」
さっきまで何をしていたのだろう。それが思い出せない。何故か記憶が混乱している、気がする。時間がたてば思い出せるということだけは、なんとなくわかった。
「ここは何処だ?」
おそらく知っている場所ではない。誰かに誘拐されたのだろうか、とも思ったがせっかく誘拐した相手を路上に放置していくわけもなし。
「っつー……」
全身が痛む。なぜ身体が痛むのだろう?
「ん……」
黎斗が体を起こすと、そこは一面雪景色だった。ビルも無ければ電線も無い。自分の下に人がいることに気づき、慌てて退こうとして今度は剣に躓いた。
「痛っ」
その声に反応するかのように、前方で止まっていた優雅なオブジェクトが動き出す。
「バーラーキーエールー!!」
「ヒッ……!?」
狂気に染まった声を聞き、黎斗の本能が警鐘を鳴らす。
――ここにいてはいけない
殺気にあてられて立つことすら叶わず、四つん這いになって逃げようと
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