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魔王の友を持つ魔王
§1 魔王になった日
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う信じて走り出した少年の足は数秒後に停止を余儀なくされる。

「嘘、だろ……?」

 川の対岸が、無かった。自宅のあった場所、いじめられたり仕返ししたりした小学校、ラノベにハマった中学校。それら全てが、存在しなかった。黎斗の目に映る土地は全て、焦土と化している。荒地ですら、無い。踏み込んだら死ぬ、そんな気配が充満していた。

「ほう、生き残りが居たか。てっきり全員踏みつぶしたと思ったのだがな」

 妖艶で、優雅な、とても冷たい声。人のようだが、人にこんな声が出せるのだろうか。……後ろにいるナニカは人間なのか?

「あぁ、違う違う。人の子よ、(わらわ)をそなた達と一緒にするな」

 心を読んだかのような一声。恐る恐る振り向く。美しい、とても美しい女性が居た。そのあまりの美しさは触れた瞬間にこちらの心臓が止まってしまいそうな程に。思わず後ずさる。

「ひっ……」

「ほぅ、妾との格の違いを感じ取ったか」

 彼女に触れようとしてきた人間達は次の瞬間死んでいる。視界に入る男はみんなそれで死んだ。途中から面倒くさくなって都市ごと燃やし尽くしたが。やはり多くの生命を消していくのは愉しい。この少年も男共と同様の命運を辿ると思ったが。

「この惨状を見て、妾を見ては流石に妾を畏れるか」

 運が良い、と言うべきなのだろうか。だが、幸運はいつまでも続かない。度を過ぎた幸運は死神に興味を抱かせる。

「面白いことを考えたぞ、人間。貴様、無様に這いずり回れ。妾が復活したことを祝い、犬畜生のように逃げ回れ。そうだな、一刻程逃げ回れたら貴様は見逃してやろう」

 既に思う存分力を振るった彼女にとって、人間一人程度どうなろうが知ったことではない。だが、生き残った挙句彼女の力を薄々感じとる人間は、彼女に興味を持たせるには十分すぎた。

「さて、ただ逃げるだけではつまらぬだろう、鬼を出してやる」

 凄絶な笑み。無数の鬼が現れる。生理的な嫌悪感と共に、黎斗は更に後ろへ後ずさる。

「まだだぞ人間。まだ鬼ごっこは始まっていない」

 その言葉を聞いて、彼は必死に踏みとどまる。生き残るには、彼女の命令に従う他に在りはしない。

「ほう、言うだけで踏みとどまったか。素晴らしい。なれば褒美もやろうかのう」

 彼女の周囲の空間が歪む。この街を侵蝕していく―――!!

「妾の世界と繋げてやった。もしかしたら愛しき人間に会えるかもしれんぞ?」

 暗い昏い、光の届かない夜に血の雨が僅かな色を付ける。そんな世界。

「さて、妾をせいぜい愉しませろよ、人間。―――開幕だ」

 その言葉と一緒に美女の姿が掻き消える。鬼がゆっくりと、しかし確実に黎斗の下へ迫ってくる。

「くそっ!!」

 黎斗は必死に
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