§1 魔王になった日
[1/7]
前書き [1]次 最後 [2]次話
某県某市駅前カラオケ店706号室、ドリンクバー付きフリータイム。学生料金で1人460円也。
友達連れで来るには最高の場所である。心からそう思う。しかしそれは「友達連れで来るならば」の話。1人でカラオケなど御免被る。寂しい。
ぶつくさ文句を言う水羽黎斗、ただいま1人カラオケ挑戦中。
「やっと60曲…… ノルマまであと40曲か……」
賭けなんてしなきゃよかった。そう思うが全ては後悔しても後の祭りである。
二学期期末テスト最下位は1人カラオケで100曲歌うこと。曲目及び採点された点数はその都度メンバーにメールで一斉送信すること。 800点中421点でボロ負けした黎斗は店員さんの「本日は混んでおりまして・・・」という一言で20人は入れそうな大部屋を独占である。端から見るとかなり寂しい人に見えるだろう。(ちなみに点数平均は580、最高は783だった)
「エタブレ75点、次は風にあそばれて……っと」
カラオケの点数は60〜70をいったりきたり。もらい泣きの81点が最高であったりする。
時刻は現在午後5時。 ……はたして終わるのだろうか?脳裏にささやかな疑問が浮かぶもそれを振り払って歌い続ける。
午後7時。現在78曲目。
「終わらねー…… っか無理。もう無理……ホント無理……」
メロンソーダを飲みながらため息を一つ。炭酸と甘みが疲れた喉を刺激し心地良い。癒しのひととき。
そして気づく。妙に暑い。もうじき冬なのに服一枚汗の出る温度は流石におかしい。いくら歌っていたとしても。扉の外に煙しか見えないのも気になる。
「……け、煙?」
外では、サイレンが聞こえはじめた。消防車だろうか?
「ちょ……嘘でしょ……え……」
気づけば、部屋内にも煙が入ってきている。
「ヤバ……!!」
貴重品を持つ。鞄の中から昨日の調理実習で使った後、出し忘れて放置していた三角巾を引っ張り出し口に。背を屈めて扉を開ける。目指すは外。避難訓練の成果は伊達じゃないことを見せてやる。
「……!?」
部屋の外は煙一色だった。ロクに前も見れない。なぜ今まで気づかなかった、と自己嫌悪をしながら非常口の方向に見当をつけ、進む。
煙はだんだん濃くなっていく。どうやったらこんなに濃くなるのだろう?ドアノブを捻り、足を踏み出す。途端、段差に躓き、転んだ。
「おわー!?」
外に出た黎斗を待っていたのは燃ゆる街並みだった。世紀末と言っても通じそうな程に。空は血の色をしており、雨のように赤い液体が落ちてくる。
「何だよコレ……なんなんだよ!!」
叫びながら走り出す。なんだかよくわからないが、早く家に帰ろう。そうだこれはきっと悪い夢、そ
前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ