第十一話
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付いてるんだけどさ。
「やっぱり……これ、ゴーゴンさんじゃねぇかよ……!」
その生首は、如何にも作り物といった感じの目や顔付きをしていた。
これは、拓海の実家が美容院だから、その練習に使う物だ。色々なあだ名がつけられているらしいが、俺達はこれをゴーゴンさんと名付けていた。
「んで、ゴーゴンさんと……こりゃ、ICレコーダー?」
箱の中にはゴーゴンさん以外にもうひとつ、ICレコーダーが入っていた。
「……ファイルは一つしかねぇな。取り敢えず聞いてみるか。」
俺は自前のイヤホンを挿して、そのファイルを再生した。
『うーい!どうだー千尋ー、元気してるかー!?』
『いやいや、悠斗…そんなに大声出さなくても聞こえるって。』
『いやー、なんかこう元気出してかねぇと俺じゃない感じだしさ!テンション上げてけ!』
『まぁ、それもそうだね。と言う訳で、久しぶりだね、千尋。なんか大変な事になったらしいね。』
『いや、大変ってレベルじゃねーだろ!あの深海棲艦と戦う事になっちまったんだぜ?そんでもしかしたら今頃怖くなってションベン漏らしてねぇか心配でこれ送ろうって事にしたんだろ?』
『そ、そこまで心配してないでしょ……?』
『おう、全く?だってあの千尋だぜー?なんやかんやでなんでもこなしちゃう千尋くんだぜ?どこ行っても大丈夫だっての!』
『ま、本当のこと言うと、そんな千尋に激励しようって事になったんだけどね。』
『これって激励できてるか?』
『いや、悠斗が言わないでよ……。』
『しっかし、名誉なことじゃねぇか!俺らのダチがあの深海棲艦と戦うってんだぜ?誇らしいだろ!』
『正直、僕は死んじゃわないか不安で仕方ないんだけどね……。』
『でもほら、な?』
『だね。』
『『千尋なら大丈夫だ、だろ?』だよね?』
『ま、そーゆーことだから俺達は全く心配してないからな。』
『むしろ千尋がそこで深海棲艦をボッコボコにしてるんだろうなってことを想像してるよ。』
『実際にボッコボコにしてたしな。』
『そうだね。』
『ういじゃま、頑張れよ!』
『もし休暇が取れたら、帰ってきて、またみんなでバスケでもしようよ!』
『そんじゃ、』
『『Good Luck!!』』
「全く……ゴーゴンさん入れてた意味全くねぇじゃねぇかよ……。」
俺は、ICレコーダーを机の上に置いて、そう呟いた。
全く……。
「あのバカ共が……頑張るしかねぇじゃねぇかよ……!」
俺は、そのまま窓辺に移動して、空を見上げた。
空には下弦の月が浮かんでいた。
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