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真田十勇士
巻ノ九十 風魔小太郎その九

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「だからな」
「はい、風を見ることですな」
「御主の腕なら出来る」
 由利にこうも告げた。
「間違いななくな」
「左様ですか」
「だからじゃ」
「それでは」
「あと少しじゃ、御主は風を見られる」
 既にだ、由利はその域に達しているというのだ。
「そして風を見てな」
「そうしてですな」
「その時こそわしの術の全てを授けられる」
「さすれば」
「極めよ」
 まさにというのだった。
「そして役立たせるのだ」
「それがしが風魔から授かった術を」
「御主達の道にな」
「それでは」
「うむ、修行を続けようぞ」
 このままとだ、こう話してだった。
 二人は山の中を駆け続け風を使いその声も聴いていた、そして。
 そんお修行の日々を続ける中でだ、風魔は幸村と由利にある夜共に猪鍋を喰らいつつこんなことを話した。
「北条様も最早多くは望んでおられぬ」
「今のままでよいと」
「そうお考えですか」
「そうじゃ、だから我等もじゃ」 
 風魔の者達もとだ、彼は猪の硬い肉彼等の中で作った味噌で味付けしたそれを食べつつ応えた。中には多くの山菜も入っている。
「最早な」
「ここから出られずに」
「生きられますか」
「わし等のやることはない」
 最早という言葉だった。
「だからな」
「それ故にですか」
「ここに隠棲されてですか」
「世に出られぬ」
「そうされますか」
「ここで暮らすのも悪くはない」 
 笑ってだ、風魔は二人に話した。
「だからな」
「左様ですか」
「それ故に」
「そうじゃ」 
 まさにという返事だった。
「そうするつもりじゃ」
「左様ですか」
「その様に」
「うむ、そしてな」
 風魔はさらに話した。
「たまに外に出て天下の話を聞くとな」
「天下は、ですな」
「相当なことがない限り徳川殿じゃ」
 徳川家の、というのだ。
「長い天下になるであろう」
「固まってきていると」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「だからな」
「もうですな」
「もう豊臣家の天下はない」
「後は豊臣家がどうして生き残るか」
「大名としてな。そうした状況じゃな」
「風魔殿もそう思われますか」
「天下は泰平が一番じゃ」
 風魔はこう言い切った。
「さすれば我等も楽な仕事ばかりでな」
「禄を頂き」
「安穏として暮らすことが出来る」
 そうなるというのだ。
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