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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十一話 威
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帝国でも最もヤル気のない人間達が集まる部署だ。

鈍才が平凡に、平凡が優秀になる。そんなところに本当に優秀な人間がやってきた。周囲の期待は大きかっただろう……。

「書類を読むのを苦にしていなかった。楽しそうに読んでいたな、良い意味で軍官僚として大成するだろうと思った。書類を読むことを苦にする人間には事務処理など無理だからな」
リューネブルクが隣で居心地が悪そうに身動ぎした。俺も事務処理は苦手だし書類を読むのも決して好きではない。居心地が悪かった。

「彼はシミュレーションなどは此処ではやらなかったのですか?」
「やらなかった。少なくとも私の知る限り、彼が誰かとシミュレーションをしているところを見たことは無いし聞いたこともない」

ディーケン少将は俺の質問に断定するように答えた、自信が有るのだろう。あの男が用兵家としての才能に恵まれている事は分かっている。だが此処ではその素振りも見せていない。見えてくるのは軍官僚としての姿だけだ。用兵家、ヴァレンシュタインの姿は何処にもない……。

「イゼルローンに行かせたのは失敗だった。焦ることは無かった、もう少し後でも良かったのだ……」
呟くようにディーケン少将が言葉を出した。何処となく後悔しているようにも見える。同じ事をリューネブルクも思ったのだろう。ディーケン少将に問いかけた。

「それはどういう事です」
「イゼルローン要塞には補給状況の視察で行かせた。普通その仕事はもっと階級が上の人間が行う事になっている……」
つまりあの時は特別だった、そういう事か……。リューネブルクも興味深げにディーケン少将を見ている。

「つまり、異例だった……。何故です?」
「……顔見せのつもりだった。彼が有能だという事はイゼルローンの補給担当者にも直ぐ分かったはずだ。後二、三年もすれば彼が兵站統括部のキーマンの一人になると分かっただろう」
「……」

「此処は鈍才が平凡に見え平凡が優秀に見えるところだ。此処で物事をスピーディに動かそうとしたらキーマンになる人物を押さえるしかない。そしてイゼルローンは最前線だ、補給が緊急に必要になる場合もある。向こう側にキーマンを教えるのは必要なことなんだ。彼にとってもイゼルローンと強い繋がりが出来るのは悪い事じゃない」

皮肉だった、ヴァレンシュタインが有能だったから、ディーケン少将がほんの少し焦ったからイゼルローン要塞に行くことになった。そしてあの事件が起きた。イゼルローンに行かなければ亡命することは無く彼がリメス男爵になったかもしれない。或いは軍官僚として活躍したか……。幾つかの偶然がヴァレンシュタインを反乱軍へと押しやり、そして今が有る……。

ディーケン少将との会話はそれからも続いたが、そこに見えるヴァレンシュタインはあくまでも軍官僚としてのヴ
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