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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十一話 威
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願ってもない事ではある、だが正直期待はしていなかった。おそらくは無理だろう……、亡命者との関わりなど積極的に話す人間などそう多くは無い。まして相手がヴァンフリートの虐殺者として忌み嫌われているとなればなおさらだ。
「私の知る限りヴァレンシュタインの事を良く知っている人間が二人いる」
「二人と言いますと」
「一人はアルベルト・クレメンツ准将、もう一人はアルバート・フォン・ディーケン少将だ」
俺はその二人とは面識はない、リューネブルクを見ると彼も心許なさそうな表情をしている。おそらくは知らないのだろう。
「しかし、話してくれるでしょうか」
「そうだな、今では皆が彼を裏切り者として蔑むだけだ。だがディーケンなら大丈夫だろう。彼は今兵站統括部第三局第一課にいる」
では彼がヴァレンシュタインの上司だったと言う人物か……。
「もう一人のクレメンツ准将は?」
「辺境星域で哨戒任務に就いている。彼は元士官学校の教官でヴァレンシュタインを教えていた。彼を極めて高く評価していた……」
クレメンツから話を聞くことは難しいだろう、初対面の男がいきなりTV電話でヴァレンシュタインの事を教えてくれと言っても警戒するだけだ。まして辺境星域で哨戒任務という事は平民だから追いやられた可能性もある。何処かの馬鹿貴族を怒らせたか……。
ハウプト中将にディーケン少将への口添えを頼むと中将は快く引き受けてくれた。その場でディーケン少将に連絡を取り、面会の予約を取り付けてくれた。ディーケン少将はすぐ来てくれれば、一時間ほどなら時間が有ると言う。俺はリューネブルクと共にハウプト中将に礼を言って人事局長室を出た。
兵站統括部は軍務省の直ぐ傍にある。組織図上でも軍務省の管轄下に有ることを考えれば当然と言って良いだろう。第三局第一課はイゼルローン方面への補給を担当する部署で兵站統括部の中では主流と言えるだろう。
ディーケン少将は四十前後のごく目立たない風貌の人物だった。第三局第一課課長、五年前からその職に有るとのことだった。課長室に通されソファーに座ると向こうから話しかけてきた。
「ヴァレンシュタインの事を聞きたいとのことだが、何を知りたいのかな?」
「彼はどんな士官だったのでしょう」
ごくありきたりな質問になった。ディーケン少将もそう思ったのだろう、僅かに苦笑を漏らした。
「優秀な士官だった。仕事を覚えるのも早かったし、周囲との協調性も有った……。兵站統括部にはなかなか優秀な士官は配属されてこない。そんなところに彼がやってきたのだ。いずれは兵站統括部を背負って立つ男になるだろうと思った」
兵站統括部は決してエリートが集まる部署ではない。将来性など皆無の男たちか、貴族の次男、三男坊で戦場になど出たくないという人間が集まる。いわば
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