第16話『乱刃の華姫〜届かぬ流星への想い』
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――いくら夢だといっても、もう少し実現しそうなものにしたら?いい加減『歳』なんだし――
――『おじさん』扱いはやめろ。俺はこれでもまだ30代だ。それに――※4
――それに?――
――俺は実現させる気でいるぞ。銀煌舞建国を―※5
これは、とある一匹の隼の記憶である。
どこかの戦場。
血なまぐさい風が、奔る。
断片的な記憶。彼の言葉がよみがえる。
男がいた。かつては『白銀疾風』の団長を務めていた。
今でも生々しく思い返る、ヴィッサリオンの最後の言葉――
――剣は想いを形へと描ける……それが……『流星』と……いうもんだ――
――俺たちは……『いつか星の海』で――※1
消え入るような言葉を紡ぎ終えて、ヴィッサリオンは口を動かし続ける。やがて、風を切るような声になり、言語として意味を成さないとしても、彼の言葉は終わっていない。
唇の告白が終わる。言葉になっていないとしても、ヴィッサリオンの最期の言葉を聞いた。風がそう告げていると信じて――
急速に体温が失っていくヴィッサリオンの遺体を見下ろしながら、フィグネリアはつぶやいた。
――不殺なんて……馬鹿な事するから……死ぬんだよ――
――小雨降る中、『白銀の疾風』の傭兵団達は、ヴィッサリオンの死地を後にしていった。だが、二人の少女だけは、いつまでもその場から離れようとしない。
木陰に隠れることなく、フィグネリアはその姿を見つめ続けている。その双刃の表面に、冷たい雨粒を弾きながら――
艶のない金髪の少女が、銀髪の子の手を繋いでいる。齢14と13の子供の姿から、フィグネリアは目をそらすことが出来なかった。
まだ、義父の死を受け止められずにいる。にも関わらず……その現実を敏感に感じ取っている。
今にも、風に乗って消えてしまいそうな、その不安な表情――
脳裏によみがえる――あの虚無感――
戦争だから……そう割り切っていても、心のどこかで贖い方を求めている自分がいる。
倒すしかないじゃないか。
敵だったから。再会したときにはもう――
ヴィッサリオン。あんたもわかっていたんじゃないか。
殺さなければ、相手に殺される。
殺さなければ、守りたいものも殺される。
そう、自分自身さえも、自分自身によって殺されることを――
しかし、ヴィッサリオンを斬ったこと、その忘れ形見の少女に対し、いまだ傭兵の矜持……己が律動の『終曲』を打てずにいた。
彼女が通り過ぎたる『刃』の痕には、血の華が咲き乱れる――
数々の戦場。数多の戦績。風の流れに送轟して、いつしかこう呼ばれ
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