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ソードアート・オンライン【Record of Swordmaster】
002:魔剣の誕生
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い限りだが、それでも、聞けないものもある。
「残れって言うんだろ?そんなの駄目だ。俺も行く。」
「駄目よ!私が巻き込んだのに、レイまで危険な目に遭わせる訳にはいかない。」
「いや、巻き込んだのは俺だ。ベル姉は俺の用事に付き合ってくれたんだから。」
「……っ、でも!レイは剣が……「持てるよ。」………今、何て……?」
「持てるよ、剣。」
さっきまでは無理だっただろう。だけど今なら、自分の為には持てなかったけど、誰かの……ベル姉の為ならきっと平気だ。
「……取り敢えず、さっきの武器屋に行こう。」
今だ喧騒に支配された広場を抜け出し、俺達は直前まで訪れていた武器屋に向かう。途中、フィールドの方に走っていくプレイヤーを何人か見かけた。恐らくβテスターだろう。
「……レイ、本当に平気なの?」
「……ああ、さっきとは違う。」
……本当は、平気何かじゃない。俺がこれからする事はトラウマの克服『では無い』のだから。でも、それを馬鹿正直に話しても止められるだけだ。
武器屋に入り、周囲を軽く見回す。壁に掛けられた数多の剣。その一つ一つをゆっくりと眺めていく。
覆え、包め、隠せ、己の心を剣で埋め尽くす様に………
やがて目に留まったのは、反りのある刀身を持つ片刃の長剣、一般に
曲刀
(
カトラス
)
と呼ばれる物だ。これなら刀と感覚的には同じに扱えるだろう。
俺がやっているのは、克服では無い。昔に戻ろうとしているのだ。自身の思考は要らない、感情も要らない。ただ、ベル姉の忠実な剣に成る。
剣を掴む。抵抗感は全く無い。寧ろ一体感さえ感じる。
俺は剣だ。ベル姉の為に存在し、ベル姉の為に戦う、一振りの剣だ。
克服するために来たのに、これでは本末転倒であるのは理解している。だが、もうそれすらどうでもいい。剣が考えるのは、敵を斬り伏せることだけでいい。
「………ベル姉、何からやればいい?」
「……レイ………あなた……まさか……!」
恐らく、俺は魔剣だろう。神話に出て来る、死と呪いと災禍を振り撒く魔剣。でも、構わない。ベル姉一人守れればそれでいい。たとえベル姉本人に拒絶されても、だ。
「………レイ……ごめんね……ごめんね……私、また、あなたを………」
「……良いんだよ、ベル姉。」
泣き崩れそうなベル姉に駆け寄る。泣かせないと誓ったばかりなのに、早速守れていないな。
「ベル姉が笑ってくれていたら、俺はそれだけでいいんだから。」
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