巻ノ九十 風魔小太郎その四
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「それだけじゃ」
「ですがその少しが」
「戦では変わってくる」
「そこを詰めるのもですな」
「戦では大事じゃ」
「左様ですな」
こうした話もした主従だった、そのうえで。
二人は風魔達が隠棲しているその場に向かった、そこは箱根の奥深くだった。そこに入るとだった。
すぐにだ、二人がいる山道の周りからだった。多くの声がしてきた。
「何者か」
「どうしてここまで来た」
「旅の者が迷い込んだとは到底思えぬ」
「幕府の者か」
「どちらでもない」
幸村は何処からか聞こえる声達に冷静に答えた。
「真田幸村と家臣の由利鎌之助じゃ」
「真田殿!?」
「そして由利殿か」
「真田家の次男殿と十勇士のお一人というか」
「嘘ではあるまい」
「いや、思えば並の者がここまで来られる筈もないしのう」
「忍の者でもな」
「ではやはり」
「貴殿達は真田殿主従か」
「そうなのか」
「うむ、これでわかるであろうか」
幸村は腰の刀を前に出した、そしてその鞘に刻まれている六文銭を出した。そのうえで声達に対して言ったのだった。
「これでな」
「六文銭、間違いない」
「真田家の家紋」
「その家紋が刀にある」
「それでは」
声達もここでわかった。
「真田殿か」
「そして由利殿か」
「左様」
まさにとだ、幸村はまた答えた。
「それで貴殿等に頼みがあるが」
「何か」
「風魔小太郎殿のところに案内して欲しい」
こう言うのだった。
「そうしてもらいたい」
「小太郎様のところに」
「そう言われるか」
「一体何の為に」
「そう言われるのか」
「それがしに術を授けて頂きたいのだ」
由利も言った。
「時が来た場合に備えてな」
「時、か」
「時が来た時に備えてか」
「まさか」
「幕府に対して」
「今は多くは話せぬ」
静かな声でだ、幸村が述べた。
「しかしまずは風魔殿とお話がしたい」
「どうする」
「小太郎様がここにおられることもご存知か」
「既にな」
「流石は真田殿と言うべきか」
「幕府にさえ気付かれておらぬというのに」
「無論誰にも言わぬ」
風魔がここにいることはとだ、幸村は約束した。
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