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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十話 司令長官
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ているそうだが……」
素直には受け取れなかった。手強いとは思っていた。油断できないとも思っていた。だが昨日あの男に感じた恐怖感はどう表現すればよいのだろう。

「恐ろしい男です、正直体が震えるほどの恐怖を感じます。一体どこまで此方の事を知っているのか……」
「……」
「向こうは此方を見切っている。しかし此方は向こうを見切れていない、今一つ掴みきれない……。上手く言えませんがそんなもどかしさが有ります」

そう、怖いのだ……。あの男は俺の全てを知っている。いや知っているように思える。何とも言えない不気味さだ。そして俺はあの男の事をほとんど知らない。俺よりも上のように思える、しかしあの男は俺に敵わないと言い、俺を天才だと評している。何処までが本当なのか、あの男の底が見えない……。

「恐ろしいか……、それで良いのだ」
「?」
「問題はその先だ。恐怖に蹲るか、それとも恐怖を堪えて反撃するか……。反撃するのであれば相手を知らねばならん。蹲れば死ぬだけだ。卿はどちらだ?」

ミュッケンベルガーが俺を見ている、気が付けばオフレッサーが、リューネブルクが俺を見ていた。
「……反撃します」

「容易なことではないぞ、骨が鳴るほどの恐怖に襲われても堪えねばならん。死ぬ方がましだと思う事も有ろう、堪えられるか?」
「……堪えられると思います」

俺の言葉にミュッケンベルガーが満足げに頷くのが見えた。リューネブルク、オフレッサーも頷いている。思うのでは駄目だ、堪えられる、堪えなければならない。そうでなければあの男には勝てない……。
「堪えられます」



宇宙暦 794年 12月 28日  ハイネセン  宇宙艦隊総司令部 ミハマ・サアヤ



今年もそろそろ終わろうとしています。ですが同盟軍は未だに宇宙艦隊司令長官が決まっていません。前任者、ロボス元帥があのような形で解任されましたので後任者の選定には慎重になっているようです。噂では決まるのは年が明けてからだろうと言われています、年内の決定は無さそうです。

宇宙艦隊総司令部ではこれまで居た百人以上の参謀はその殆どが総司令部の参謀職を離れました。今では僅かに残った参謀が宇宙艦隊の維持運営のために日々仕事をしています。

その僅かな参謀の中にヴァレンシュタイン准将、ワイドボーン准将、ヤン准将がいます。三人とも昇進しました、それぞれ撤収作戦、その支援作戦に功績が有ったという事を評価されての事です。

私とバグダッシュ中佐も昇進しました。今ではミハマ少佐とバグダッシュ大佐です。ヴァレンシュタイン准将を無事に連れて帰ってきた、その事を評価されたそうです。

弾除けぐらいにしかならないと覚悟して行ったのに昇進? そう思いましたが、ワイドボーン准将もヤン准将も生きて戻って
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