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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十話 司令長官
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オキシン麻薬の一件で協力体制を築いたと聞いていたが、元帥への昇進問題まで協力しているとなるとかなり緊密なもののようだ。
「それだけではありません。この二人の命も……」
オフレッサーの言葉に俺とリューネブルクが頭を下げた。その頭上をミュッケンベルガーの苦笑交じりの声が通り過ぎた。
「そのような事は止めよ、それも当然のことをしたまでだ」
顔を上げ元帥を見た。やはり苦笑している。本心からそう思っているのだと分かった。
「それでも元帥閣下が我ら両名の命を救われた事は事実です。有難うございます」
リューネブルクが礼を言い、また一礼した。俺も頭を下げた。
「二人とも頭を上げろ、それでは話が出来ん」
俺とリューネブルクが頭を上げるとミュッケンベルガーが口を開いた。
「罪はこの私に有る。陛下よりグリンメルスハウゼンの遠征軍への参加を命じられた時、それを断れなかった。受け入れておきながら戦場では邪魔になると追い払った。愚かであった、そこを敵に突かれた……。敗戦は誰の罪でもない、このミュッケンベルガーの罪なのだ」
元帥が太い息を吐いた。
「あの敗戦の後、内密にバラ園で陛下に拝謁した。グリンメルスハウゼン子爵は陛下がお若い時分、侍従武官として御傍にあった、さぞかし叱責されるだろうと覚悟した、死をも覚悟した……」
「しかし、それは」
「控えよ、ミューゼル!」
「……」
俺が理不尽を言おうとするとオフレッサーが低い声で叱責した。不敬罪を冒すとでも思ったのかもしれない。俺は黙って頭をさげた。実際口を開けば皇帝に対する批判が出ただろう。
「済まぬと言われた、許せと……」
「!」
「自分の我儘故にそちの立場を危うくした、三百万もの将兵を死なせた、許せと……。陛下は泣いておられた……。畏れ多い事ではあるが陛下を御恨みしなかったと言えば嘘になる。だがあの時、陛下は私に頭を下げられたのだ……」
全人類の支配者にして全宇宙の統治者、天界を統べる秩序と法則の保護者、神聖にして不可侵なる銀河帝国皇帝、その皇帝が、フリードリヒ四世が泣いて頭を下げた……。ミュッケンベルガーは何かに耐えるかのように目を強く閉じている。
「誰よりも陛下が御自身の罪を愧じておいでであった。私が罰せられなかったのもそれ故の事。ならばどうして私が卿らの処罰を見過ごすことが出来る。それをすればもはや人ではあるまい……」
「……」
俺の命はミュッケンベルガーに救われた。そのミュッケンベルガーはフリードリヒ四世に救われた。つまり俺は皇帝に命を救われたという事か……。あの男に命を救われた……。
あの男は自分の罪を知っていた。ならば俺はどうだろう、オフレッサーにグリンメルスハウゼンを見殺しにしたと言われるまでその事に気付きもしなかった。罪悪感も感じなか
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