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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十九話 互角
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れているのかもしれない。
「カストロプ公は大貴族だ、そして財務尚書でもある。彼を排除するとなれば事前に根回しが要るだろうが」
「……」

「いざ潰すという時になってリッテンハイム侯が反対したらどうなる? その時点で贄の秘密を話すのか? 侯はへそを曲げるぞ、何故前もって教えなかったとな。それに後任の財務尚書の事もある。おそらくは既にリヒテンラーデ侯、ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯の三者で話し合いがもたれたはずだ、その中で全ての秘密が共有され、そして後任の財務尚書も決まった……」

リッテンハイム侯も娘が次の皇帝候補者の一人だ。贄の秘密など表に漏れて欲しくは有るまい。つまりキスリングを殺す動機が有るという事か……。そして今では俺達を殺す動機を持つという事だ……。気が付けば俺は帝国の闇に首までどっぷりと漬かっていたらしい……。

「ミューゼル、リューネブルク」
「はっ」
思考の海に沈んでいた俺をオフレッサーの声が引き上げた。

「俺は元帥府を開く、卿らは俺の元帥府に加われ」
「はっ」
リューネブルクは躊躇う事無く答えたが俺は正直即答できなかった。オフレッサーの幕僚になるという事は陸戦隊指揮官になるという事だろう。それは俺の望むところではない。

「安心しろ、ミューゼル。卿に装甲擲弾兵を指揮しろとは言わん。これまで通り艦隊を指揮できるように交渉してやる。卿の後ろには俺が居るとはっきりさせた方がいい、そういう意味だ。孤立はもはや許されんと思え」
「はっ」

確かにそうだ、ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯、そしてリヒテンラーデ侯、その誰もが俺を殺そうとしてもおかしくない。そしてオフレッサーは陸戦隊の頂点にある。彼を敵に回すにはそれなりの覚悟が要る。場合によってはこのオーディンで地上戦を起こす覚悟が必要だろう。後ろ盾には最高の人物と言って良い、だが……。

「閣下、一つ教えていただきたいことが有ります」
「何だ?」
「何故、小官にそこまで御配慮下さるのか、教えていただけますか」
俺の言葉にオフレッサーはしばらくの間沈黙した。そして低い声で問いかけてきた。

「卿、先日の反乱軍の作戦、ミサイル艇を使っての攻撃をどう思った?」
おかしな展開だ。俺の質問に質問で返した。オフレッサーらしくない。
「狙いは悪くないと思いました。帝国軍が並行追撃作戦を恐れれば、どうしても注意は正面の艦隊に向きます」

俺の答えにオフレッサーは無言で頷いた。そしてソファーから立ち上がると総監室のスクリーンを操作しイゼルローン要塞を映した。
「卿がもし三千隻の艦隊の指揮官だとしてあそこにいた場合、どうする?」
妙なことを言う男だ。表情から判断すると俺をからかっているわけではない様だ。となると試しているのか……。だが何のために試
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