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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十九話 互角
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ルスハウゼン艦隊は壊滅した。生き残ったのは卿らを含めほんの僅かだ。味方を見捨てて逃げたと言われても否定はできまい」
「……」
オフレッサーの声は低く重い、のしかかってくるような声だ。確かに否定できない。あの時俺とリューネブルクは何よりも生き残る事を優先した。グリンメルスハウゼン艦隊が壊滅するであろうことを確信し、その上で生き残る事を選択したのだ。
あの艦隊の司令部は俺達の指摘する危険性を全く無視した。あのような馬鹿どもに付き合って死ねるか、そんな気持ちが有ったのは事実だ。見殺しにしたと言われても否定できない。いや、あれは見殺しにしたのだ。
「卿らを処断する事で味方の士気を引き締め、二度の敗戦は許さぬと皆に知らしめる……、誰もが納得するだろう。卿がグリューネワルト伯爵夫人の弟という事は関係ない、いやこの場合はむしろ好都合だろうな。寵姫の弟であろうと特別扱いはしない、軍律の前には皆が平等であるという事だからな」
知らなかった、そんな事が話し合われているとは全然知らなかった。知らなかったのは俺だけではない、リューネブルクの顔も引き攣っている。どのレベルで話されたのか、帝国軍三長官、そしてそれに準ずる男達、そんなところか……。
「だがミュッケンベルガー元帥はそれを拒否した……」
戦場で混乱したこと、グリンメルスハウゼン艦隊を救援できなかったこと、そして艦隊決戦で勝てなかったこと……。そのいずれもが自分の罪でありあの両名の罪ではない。
軍の拠って立つ処は信賞必罰に有る。罪なき者に責めを負わせてはその信賞必罰が崩れる事になる。責めを負わせることで軍の引き締めを図るのであれば、責めを負うのは自分であり、あの両名ではない……。
「卿らはミュッケンベルガー元帥に救われたのだ。当たり前の事だと思うなよ、反乱軍の事は聞いていよう」
俺もリューネブルクも頷いた。反乱軍の総司令官ロボス元帥は己個人の野心を優先させようとしたとの嫌疑で戦闘中に総司令官職を解任された。帰国後の裁判でも解任は正しかったとされロボスは失脚している。
運が良かった、ミュッケンベルガーとロボスが逆なら俺とリューネブルクは死んでいただろう。ミュッケンベルガーの矜持と識見に救われたのだ。ミュッケンベルガーは宇宙艦隊司令長官としては不運だったかもしれない。
しかし、イゼルローンで無理をせず撤退したことといい、他者に罪を押付けなかったことといい、容易にできる事ではない。見事な進退ではないか、ロボスを非難する人間は今後も現れるだろうが、ミュッケンベルガーを非難する人間が現れることはないだろう。
「俺は明日、ミュッケンベルガー元帥の屋敷に挨拶に行く、卿らも同行しろ」
「はっ」
俺達が頷くとオフレッサーも重々しく頷いた。
「説教は終わりだ、卿らの知りた
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