梅雨の晴れ間
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つも一緒にいるメンバーはすでに影も形もなかった。
「な?ごめん、今日だけだから」
「良いよ、別に。独りでいつも帰ってたし」
そのとき、外の雨の勢いが若干緩やかになったような気がした。
「お前さ、昨日何してたの?」
クラスのとある女子から話しかけられた。喧嘩腰で。
「昨日?何時ぐらいか言ってもらわないと、僕のしてたことって色々あるから」
僕が独りぼっちだって、やることはたくさんあるんだ。それを解らないとはこの女子は一体何を考えているのだろう。
「お前の方が何考えてんだよ!」
思っていたことが口に出ていたようだ。独りぼっちが長く続きすぎたせいで独り言の癖がついてしまった。今度から直さないとな。
「なんで昨日の放課後、お前が寺田君と帰ってたの?寺田君はさ。傘忘れたから。とか言ってたけど昨日は傘を忘れてなかったの」
そうだったのか。何たる嘘吐き。
昨日の一緒に帰ってる内に、寺田のイメージは良くなっていたが、これは下降修正をしなければいけない。
「お前、寺田君のこと脅してんの?」
「脅すとか知らないよ。第一、僕が他人を脅す必要性なんて皆無だし」
「じゃあ!なんで!昨日!2人で帰ってたんですか?!」
鬱陶しい。そう思った僕は彼女から目を逸らした。
「ハッ。図星指されたらだんまりですか。そうですか。ちょっとこっち来い」
「なんも脅されてもないけど」
昨日、聞き慣れた声が女子の背後から聞こえた。その声は寺田だった。
「なんかさ。輪島のこと勘違いしてるみたいだけど。輪島は俺のことを脅したりする度胸も頭も力も無い。ましてや、今の今までお前らが気付かないぐらいに、根暗でボッチで影薄くて空気みたいな存在の輪島が俺を脅したり出来るとか思うか?」
何だろう。今、物凄く寺田を殴りたくなってきた。多分、彼には何の悪意もなくただただ、事実を述べているのだろうけれど、僕にとってはこれ以上とない最高に傷を抉る言葉達だった。
「けどよ。毎回掃除の後始末とか黒板消しとか、皆が気づいてないところでこいつはやってんだよ。それに気付いてないお前らはさ、こいつの何に気付いてんだ?」
寺田は言い切った。多分僕ならば、ここまでいうことは出来ないだろう。だから、寺田がカッコ良く見えた。
「ん。なんか、ゴメン」
女子がそう言ってきた。それに対して僕は大丈夫、気にしてないから。とだけ返しておいた。そして、僕に突っかかってきた女子はそそくさと自分の席へと戻っていく。
「寺田、ありがとう」
「大丈夫だって!ところで今日にカラオケ行かない?」
「馴れ馴れしすぎるでしょ。初めて喋って1日でカラオケ誘うとか」
「やっぱダメ?」
「駄目、今日は。今日は用事があるから」
「え?ボッチのお前が何か用事あんの?」
「さっきからボッチとか言わないで!何気傷つくから!」
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