1st season
5th night
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で……Crazyな奴だ……」
不敵に笑うグレーラビット。だが追撃のアクセルを緩めることはない。彼にパッシングしたエリーゼは、以前C1で四つ巴のバトルを繰り広げた青年だった。
「こないだのバトルは結局決着つかなかったからな……今度こそ勝ち星を挙げて見せる。この車で勝たなきゃ意味がねぇんだ」
9号線の細かいコーナーをほぼノーブレーキでクリアしていく二台。
「俺とこいつは、まだこんなところで止まれはしない!」
しかし、そうやって必死に逃げるエリーゼの後ろを悠々と食らいついていくグレーラビット。
「……冗談じゃねぇ……もっと踏んで見せろ……こんなSPEEDじゃ、奴には勝てはしない……」
その姿はまるで静かに狙いを定めつつも、踏み込めないルーキーをせかすよう。だが積極的に動くことはなく、ただ静かに追い続ける。
「やべぇよ……やべぇよ……とんでもねぇ奴に吹っ掛けちまった……」
焦っているのはエリーゼのドライバー。なんとか走りに出さないよう抑え込みながらも、彼の集中力は乱れ始めている。
「どんだけすっ飛ばしても振り切れねぇ……このままじゃ、この先は湾岸合流……どうあがいてもこの車で勝てるステージじゃねぇ……」
頭ではわかっている。しかし彼からしかけたバトルである上、負けそうだから引き下がれるほど、器用ではなかった。
「細かいコーナーを処理する技術も、車のパワーも向こうが上……車体こそ軽いから多少の無茶は効くが、それにも限度がある……」
アクセルを踏み込む右足が震える。いや、その震えは彼の全身を襲う。その車での未体験ゾーンにいるという恐怖。一歩間違えればどこに吹っ飛ぶかわからない、ライトウェイトスポーツならではの浮遊感。
「湾岸……湾岸までだ……そこまでは付き合ってくれるはずだ……」
今や、彼に戦意は残っていない。あるのは、ただ板挟みになった恐怖。
「この車で……籠の外に出ちゃいけなかったんだ……俺には、まだ早かった……」
そして、そのままポジションが変わることはなく、枝川の先、右の直角コーナーを抜けて湾岸合流。立ち上がり重視でアウトに振ったエリーゼに対し、進入で無理をせずアウトからインに抜けてきたZ32がエリーゼをパス。そのままパワーの差を生かし、完全に振り切った。
「冗談じゃねぇ……そんな車で、ゆりかごの外に出てくるんじゃねぇよ……」
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