1st season
5th night
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たらガレージで待っていてくれ」
そう残すと、若き青年整備士はまるで飛び上がって喜ぶかのごとく仕事に戻っていった。それを「若き老兵」と壮年の整備士は笑顔で見送り、仕事に戻る。
「何を仕込むつもりなんですか?」
「何、老兵なりのお節介ってやつです」
その夜、横羽線下りを流しながら、彼は新人に話しかける。
「昼間怒られてたとき、このRを見てただろ?」
「いえ、そんな事は……」
「誤魔化さなくてもいい。ウロチョロ走り回らされても目線は必ずコイツに惹かれてた」
「う……はい」
狼狽える新人に「若き老兵」は表情を和らげて話しかける。
「Rは好きか?」
「はい」
「何故好きか、自分の言葉で説明出来るか?」
「とにかく速くて、カッコイイからです」
「そうか……まぁ、答えとしてはシンプルだし、悪くないな」
あくまで巡航速度。ずっしりとしたボディから伝わる安定感が、むしろ眠れる獅子のごとき雰囲気を匂わせる。
「Rがなぜ速いと言われているか解るか?」
「それは……やっぱりエンジンとか足回りとか……」
新人らしく、わかりやすいところを挙げていく彼に、老兵は表情を変えずに叩き返した。
「違うな。他にもいい造りをしているマシンはいくらでもある。Rだけが特別な技術で作られてる訳じゃない」
「……だとしたら、一体あの凄さは?」
「Rの速さは、余裕と汎用性だ」
手元のスイッチを操作し、システムをパターン2に変更。その瞬間、マシンが雰囲気を変えた。目立たない滑らかな雰囲気が、鋭利な槍のように研ぎ澄まされていく。
「これは……!?」
「大体どこに行ってもRは速い。どんなサーキットでも、どんな峠でも、そこに合わせたチューニングが出来るからだ」
「っ……後ろから何か来ます」
「F40……フェラーリか、丁度いいから見せてやる」
甲高い咆哮を上げながら追走してきたのは、スーパーカーと名高いF40。圧倒的パワーがタイヤを唸らせ、路面を掻き毟る。
「さて………」
一瞬アクセルを抜き、F40を前に立たせると一気に踏み込んだ。強烈な加速Gが二人を襲う。
「ッッッ!!」
「喋ろうとするな、慣れてなきゃ舌噛むぞ」
凄まじいトラクションで二台は駆け出した。かたや12気筒を搭載する真紅の跳ね馬、かたや極限まで改良された赫い重戦闘機。
「今のパワーはあっちの方がある、当然の事だ」
フェラーリはコーナーを抜ける度に突き放そうとアクセルを開け、タイヤに悲鳴を上げさせながらも前に出る。しかし、Rはピッタリと張り付いて離さない。
「だが、踏めないパワーは無いも同じだ」
コーナーを抜け、狭い直線を疾り、一般車を掠めながらも淡々と狙い続ける。
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