0036話『提督の心の行方』
[1/3]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
妙高達から戦艦棲姫を撃破したという知らせを受けて少しばかりホッとしたと同時に急になにか寒気を感じている自分がいた。
最終作戦の半分は成功したのに素直に喜べない自分がいる。
それもこれも大本営の命令が原因であるのは明らかな事で…。
確かに私が率先して出撃すれば他の鎮守府の提督達の向けてきている視線や疑惑などは払拭できるほどだろうとは思う。
だけど、私自身の事を少しは考えて考慮してほしかった。
まだ通常海域で戦果を上げてそれを証明にすればいいという軽いモノなら少しは楽にできそうだけど、今回は相手が相手だ。
私も本気でやる覚悟をしないとこちらがやられてしまうのは必須な事で…。
そんな時に限って私の頭によぎるのはどこか寂しい表情を浮かべる榛名の顔。
榛名は以前にある事を言っていた。
私が聞き出した事でもあるのだけど、
『なぁ、榛名。お前は出撃できなくて寂しくないか…? 辛くないか…?』
私のふとした言葉に榛名の表情は固まっていた。
それでしばらくして榛名は体を震わせて、
《辛いです…金剛お姉様や他にもたくさんの仲間の皆さんが出撃しているというのに…私はなにもできずにただ皆さんの無事を祈る事しかできないのが…悔しいです》
榛名の本音から来るセリフに私は鈍器で頭を叩かれたような衝撃を受けた。
当たり前だったのだ。
榛名はうちでは最高練度に近い艦娘だった。
そしていつも限定イベントでは最終海域で旗艦を務めるうちの切り札だった。
だけど謎の光によって異世界に飛ばされた私がどういう訳か異物として榛名の中に入り込んでしまった。
そして榛名自身はそれ以降は私に完全に身体の自由を譲り渡してくれて今では精神体のような存在になってしまい、私は榛名の身体を奪ってしまった…。
負い目がないといえば百パーセント嘘になる。
榛名を榛名以外の意思で戦えない身体にしてしまったのだから…。
悔しがっている榛名の事をその場で抱きしめてあげられない自分が憎らしくもあった。
だからという訳ではないけど私は前からある事を考えていた。
榛名が戦えないのなら、榛名が役立てるように私自らが戦場に出るという事を…。
実際この世界に転移してきた時に妖精さんの助けもあったけど下級の深海棲艦とはなんとか戦えた。
だからって訳でもないけど自信がついたわけでもない。
そこまで過信しているわけもない。
私はあくまで中身はただの人間でしかないのだから。
榛名の練度は榛名自身のもので私が扱えるものではない。
せいぜい私が榛名の身体で戦闘をするものなら半分の力量も出せないだろう。
だから私が戦場に出れば役立たずになってしまうかもしれない。
だけど、それでも私は少しでも戦えるのならみんなと一緒に戦いたいと思っている。
だから今回の大本営の
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ