外伝
外伝『魔弾と聖剣〜竜具を介して心に問う』―終章
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悪魔に対抗するためにも、人間たちは『生体兵器』を凌駕する性能を次々に求めた。それまで実用化のめどが立っていなかった『戦闘式祈祷契約』、『魔剣運用』などである。
しかし、無敵とも思える祈祷契約と魔剣を造り上げたものの、それを運用する人間側の問題は、まったく解決されていなかった。魔剣の出力に人間の技量が追いついていなかったのだ。結局のところ、彼らがそれを実践の場において用いることが可能になったのは、皮肉なことに、セシリー=キャンベルという『目の前に映る全てを救う』・『悪魔契約という腐った力は信用しない』という正義を掲げた、強い信念を抱く騎士の存在があったからである。
次々と発見される魔剣の存在を、独立交易都市の市長『ヒューゴー=ハウスマン』は深刻な脅威と受け止めた。――魔剣は対勢力から常に狙われている――という別の脅威が存在している上に、その魔剣を狙う為に、禁忌となったはずの悪魔契約を利用する。脅威が脅威でかさばる事実……損耗率対策の為に、少数精鋭においての悪魔対策は最重要課題となる。
だが、そうなると別の問題も生じてくる。
魔剣の実戦配備、戦闘用祈祷契約、少数精鋭、という卓越した防衛能力を他国に危険視され、各国対立の緊張感と軋轢を生み出してしまう――という問題だ。もともと独立交易都市は『独立交易都市―ハウスマンは、あらゆる国家権力から独立する。ゆえに中立を永久に掲げる』という理念上、戦術理論は拠点防衛に偏っている。加えて、『神剣の刀鍛冶』による一子相伝の技術公開を秘匿している面も、各国からの逆風をあおる一因にもなっている。
後に天才学者である『ユーイン=ベンジャミン』が発明されるであろう『通信伝令玉鋼』や、凱の所有物だった『GGGスマートフォン』を組み合わせた『多目的通信玉鋼』という発想は、『一つでも多くの生命を救う』ための、避難誘導という解決手段へ向けてのひとつの回答といえるだろう。※1
それにしても――代理として遣わされた悪魔――ヒトを殺し合わせるために生み出したシステムによって、ヒトは本当の意味で『進化』を勝ち取ったのではないのだろうか。脆弱な体を持つ人間と、その脆弱な人間の戦友たるアリアのような魔剣は、一つの仕様とみれば、対極の可能性を見せてくれる『未来』そのものと言えなくもない。
そういう意味では、人という四肢と意志を持った肉体と、四肢はなくとも意志を持つ竜具を組み合わせた『戦姫−ヴァナディース』という様式も、新たな未来を見せてくれるという点において同じことがいえるかもしれない。
ただ、『魔剣』と『竜具』の双方に通ずること――それは、『人』と『魔』による戦争の土壌にまかれた『種―シード』が芽吹いたものの集大成という……不幸なことと言わざるを得ない。
『同刻・黒船甲板・
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