外伝
外伝『魔弾と聖剣〜竜具を介して心に問う』―終章
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悪魔契約――
人間の血肉を空気中の『霊体』に喰わせ、『人』を『悪魔』に変貌させる現象のことである。
東の黒竜が吐き出す『霊体』―ヴァルバニルの憎悪と呪いは本来、ヒト同士を争わせ、絶滅へ導き、『代理契約戦争―システム』を起動する為の『指金−プログラム』にすぎなかったが、やがてそれが人類の文明発展に貢献し、国境の役目を果たす『抑止力』と成り果てたことは、いったい誰が予想できたことだろうか。
悪魔契約で誕生した悪魔の数々。人間より強固で汎用をしめす『魔』の存在こそ、今後の戦争を制すると『人』は信じていた。悪魔という『人ならざるもの』に、戦略兵器としての価値を見出したのは、人の心の奥底に潜んでいた、魔としての性なのだろうか?
ある時は『炎』をまとい――
ある時は『氷』に覆われて――
ある時は『女』から『剣』へと形を組み替えて――
脆弱な人間に比べ、悪魔は数多の環境に適する性質上、際立って高い生存能力と戦闘力を有している。憎しみの果てに叶えた契約……悪魔は、一度解放されたら恐れを知らない自動殺戮生体兵器となる。
こうして生み出された悪魔たちは、それまでの主戦力であった『騎兵』を圧倒し、物量において遥かに勝っていた『人間』との戦闘において、目覚ましい戦場労働を見せ、戦局を覆すまでになったのである。
だが、成果に対して誤算もあった。
悪魔たちを構成する『霊体』が、ヴァルバニルの勢力圏に順応して、悪魔の高い能力へ影響を及ぼしてしまうことだ。文字通り、悪魔の『王』たるヴァルバニルの『息が掛かっていない』勢力圏では、その力を大きく失ってしまう。ヴァルバニルが吐き出す霊体は、悪魔の活動を支える栄養素として、なくてはならないものだからだ。
『人』を集めた『大軍』よりも、『魔』としての『精鋭』が有効とされる時代となったのである。
その事実は『代理契約戦争』の終戦後、まもなくして三国一都市にも認識するところとなる。条約で禁止されたはずの悪魔契約を、帝国と群集列国が拿捕した悪魔を研究し、独自にこの生体兵器の開発に着手したのは、その認識があったからこそだ。ほぼ同時期に、最先端の霊体技術を持つ『独立交易都市』においてもまた、悪魔契約の開発が進んでいた。独立交易都市の建立者ハウスマンはやがて、周辺国の要請に乗せられる形で、『祈祷契約』を生み出すことに成功する。この祈祷契約こそが、機械文明を持たない人類に、『ショウドク』・『ジカン』・『シャシン』・『オンキョウ』といった知的財産を寄付したのだ。
だが、彼らは時期にヒトとしての限界へぶち当たることとなる。
悪魔を生み出すために必要な文言……ヒトの幼生体が『死言』を唱えられるよう言語能力を身に着けるまで成長を待たなければならない――それも、早くとも1歳、確実には3歳まで――という事実である。
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