=USJ襲撃編= ヘイトセレクト
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けた恐怖と内蔵が痙攣するような震えを誤魔化すように、黒霧を不快成分割り増しで睨みつける。
黒霧の暴走エヴァみたいな黒目のない瞳もまた、どこか冷たい温度で俺を見ていた。
空気がひりつく、本物の殺意。どういう訳か知らないが、今回の作戦を棄ててでも俺を殺そうとしやがった。次が来るか――と身構える。だが、それは杞憂だった。
「……これ以上は難しい、か。貴方の言う通り既に作戦も半ば失敗しました。素直に引き下がりましょう」
「不意打ちしても構わないぜー」
「牽制ですか。そつがないですね。だからこそ………」
言うが早いか、黒霧は自らワープホールに入り込み、その場を後にした。
直後。
(クソッたれ……怖ぇよ、ヴィラン。怖ぇよ、死ぬのは……)
俺は極度の緊張が解かれたことで、短期間に未来を見過ぎた反動の睡眠欲に飲み込まれた。
所詮は平和な日本の平和な町で、命の危機もなく生きてきただけの凡庸な男。
この一件は、俺が自分の身の程を知るという大きな意味を持って、俺の課題となった。
= =
「――10トンはあるぞ、この岩雪崩。しかも土砂より岩が殆ど。落下してきた地点は頭上6メートル前後……まともに当たれば死んでる所だ」
「あたし、本当にたっくんが死んじゃったかと思った………」
膨大な瓦礫を前に轟が思わずそう呟き、芦戸は俯きながら弱々しい声でそう漏らした。
オールマイト登場以降の騒乱を終え、オールマイトとデク以外唯一のグロッキー組となった水落石が心地よさそうな寝顔で運ばれていく中、A組の残りの面々は黒霧と水落石の戦闘痕を見て青い顔をしていた。
組の大多数の生徒がぶつかったヴィランは精々が個性を持て余して暴れた程度の存在だ。厳しい入試を突破した新進気鋭の若者たちの多くがそれを難なく撃破出来た。そんな中、唯一本気で殺しに来る本物の犯罪者とタイマンを張る羽目に陥った生徒が水落石だった。
教師の援護どころか同級生の援護すら出来ない孤立無援の状態で、彼はこの規模の攻撃を見事に避けきったものの、やはり彼自身の精神には相当な負担だったのだろう。黒霧の撤退と同時に見事にぶっ倒れてすやすや寝息を立て始めた。
「下らねぇ。個性で正面から吹き飛ばせば殺せんだろ」
「それはミスター爆豪の個性ならの話じゃん?」
「避けられたのもあいつの超感覚の個性か?」
「でもよぉ、それなら孤立する前にあの黒モヤのワープ攻撃を避けきれたんじゃね?」
(わ、私の所為だ……水落石くん、最初に避けようとしてたのに……!)
様々な生徒たちが、それぞれの思惑を交えつつ。
緑谷出久というヒーローの成長を交えつつ。
そして様々なヴィランに小さな波紋を齎しつつ。
USJ襲撃事件
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