第二章
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「悪魔か何かな」
「あそこまで冷徹な奴はいない」
「あの男には近寄るな」
「それこそ利用されて消される」
「何があっても近寄るな」
こうしてだ。フーシェは誰からも警戒され信頼されていなかった。そして危険視もされていたのである。まるで悪霊の様に。
それはナポレオンも同じでだ。側近達にこう漏らしていた。
「フーシェを信頼したことはない」
「そうなのですか」
「あの方は」
「そうだ、ない」
こう言い切るのだった。
「一度もな」
「しかし警察大臣ですが」
「我が国の柱の一つですが」
「それでもですか」
「そうだ。それでもだ」
ナポレオンは苦い顔で言う。
「タレーランも厄介な者だが」
「確かに。あの方は」
「あの男はある意味において私以上の者だ」
認めると共に警戒している言葉だった。
「怪物だ。私以上にフランスに忠誠を誓っている」
「そのうえで動かれている方ですね」
「何かあれば平気で私を裏切るだろう」
ナポレオンは直感的にそう見抜いていた。そしてその直感は正しく後に実際に彼は彼に裏切らて失脚に至っている。
「しかしだ」
「警察大臣もですか」
「あの男も私以上の者だ」
やはりある意味においてだ。
「怪物なのだ」
「怪物故にですか」
「そうだ。いざという時は私を裏切る」
やはり本能的に察していた。フーシェのことも。
「だが。フランスにとっても私にとっても必要な男だからだ」
「用いられていますか」
「タレーランが言ったそうだな」
そのもう一人の怪物の言葉をここで引用してだ。ナポレオンは言った。
「フーシェの後任はフーシェしかいない」
「あの方しかですか」
「これまであそこまでの者が出たことはない」
やはり認めると共に警戒している言葉だった。
「まだタレーランは許せるか」
「それは何故でしょうか」
「何処か人間味がある」
絹の靴下の汚物と言ってもだ。それでもだった。
しかしフーシェにはだ。ナポレオンといえどこう言うのだった。
「あの男にはそれが感じられない。まるで氷だ」
「氷ですか」
「若しフーシェより少しだけ能力が落ちてその者に人間味があればその者を警察大臣にしよう」
これがナポレオンの本音だった。だが、それはだった。
「しかし。そうした者は一人も生き残らない」
「警察大臣が消されますか」
「まさに怪物だ。人間の心はないのではないのか」
ナポレオンですらこう言うのだった。とかくフーシェについては誰もが警戒し好いてはいなかった。しかしだった。
彼はかつて教師だった。教師には生徒がいる。その生徒達はこう言うのだった。
「
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