第一章
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高潔な教師
ニコラス=フーシェはナポレオンの第一帝政において警察大臣だった。その鋭利さと辣腕はよく知られていた。だが。
「あいつには関わるな」
「恐ろしい男だ」
「付き合うと利用されるだけだ」
「寝首をかかれるぞ」
「人の命なぞ何とも思わない男だ」
これが人間としての彼の評判だった。
「実際に平気で人を裏切ってきた」
「ルイ十六世の時を見よ」
かつて彼がしてきたことはよく知られていた。
「死刑にすべきか否か。議論になっていたな」
「それで死刑にすべきでないとの結論に傾きかけた」
「だがそれはロベスピエールの望むところではなかった」
当時フランスの独裁者であった彼は国王だったルイ十六世の処刑を心から望んでいた。しかしそのことについて議会では議論になっていたのだ。
「議会には元王党派もいた」
「それに穏健派もいた」
穏健的共和主義者だ。ジロンド派という。
「穏健派と急進派の対立にもなっていた」
「ジロンド派とジャコバン派のな」
急進派がジャコバン派、ロベスピエールの派である。
「それでろベルピエールの今後にも影響しかねなかったが」
「死刑にすべきでないとの意見になりかけた」
「ジロンド派優位になってきていた」
ジャコバン派にとっては危うい流れだったのだ。ここでだ。
フーシェが出て来たのだ。当時彼は穏健派であり国王に対しても好意的だと見なされていた。それでだったのだ。
「あの時誰もが思ったな」
「うむ、国王はこれで助かるとな」
「フーシェはルイ十六世の死刑に反対すると」
「皆思った」
実際にそう思ったのだ。議会も国民もそしてロベスピエールも。
だが、だったのだ。ここでフーシェはこうしたのだった。
「だがあの男は国王の死刑を主張した」
「ロベスピエールがこれからも権力を拡大すると見てな」
「それでだったな」
「ロベスピエールにつく為の手土産としてな」
「元国王の死刑を主張した」
「自分が言えば死刑になることがわかっていてな」
「そのうえでだった」
皆忌々しげに言っていく。
「実際にルイ十六世は死刑になった」
「ギロチン台で首が落ちた」
「そうなったな」
「無残なことにな」
こう話されれるのだった。フランス人達の間で。
「王妃も処刑された」
「それからジャコバン派の時代になりフーシェはその中に入った」
「ジャコバン派の中で辣腕を振るった」
「そしてだ」
その辣腕によってだ。何をしたかということも彼等はよく知っていた。忘れられるものではなかったと言うべきであろうか。
「叛乱を起こした街の市民の一割を殺
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