Side Story
少女怪盗と仮面の神父 44
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稀有だからな。楽しみにしてるぞ」
「余計なお世話だって言ってるでしょ。莫迦ソレスタ!」
「「「「!!?」」」」
吐き捨てるように罵倒した!? 聖職者が、王族を!? しかも、呼び捨て!? 呼び捨ては幾らなんでも完全に懲罰の対象だろう!?
と、剣を構え直そうとする騎士達に背を向けて、アーレストはさっさと河岸を離脱してしまった。
マーシャルを抱えたメイス第二騎士団団長も、慌ててその後ろに続く。
「……今のは、アーレストに与えてた課題だ。「私が自分を「俺」と言ってる間は、私を王族扱いせず、ごく親しい身内として接するように」ってな。私が権力を行使して強引に言わせたんだから、当然、不敬罪には当たらない。全員、控えろ。」
「「「「は……っ!」」」」
中途半端な高さで刃先を泳がせていた騎士達が一斉に背筋を伸ばして踵を揃え、左手で剣身を上にした握り部分を胸元へ引き寄せ、反対側の腕を腰に当てる。
此処に至る経緯や、王子とベルヘンス卿とアーレストの関係等、問い質したい事は山程あるが、騎士達には自分から王族に声を掛ける権利が無い。
尽きない疑問に内心はモヤモヤしながらも命じられた通りに控えると、不意に王子がハウィスへ足先を向けた。
「ハウィス」
「はっ」
「私を恨むか?」
「…………」
「私は、お前に汚い仕事を押し付けた挙句、お前が慈しみ育てたミートリッテを奪う。厳密には私が奪うのではないが、私も「此方側」に引き込める機会があれば何らかの形でそうしたいと最初から思っていた。アリア信仰か、アルスエルナの政界か……どちらにしても、そう長い事一般民ではいられなかっただろう。権力者の都合でお前達母子を振り回す私が、憎いか?」
「…………」
王子は真剣な顔で、ハウィスをじっと見る。
ハウィスも、剣身越しに王子の顔を見つめる。
しばしの沈黙を挿み、そして……
「いいえ」
ハウィスはキッパリと、首を横に振って答えた。
「ミートリッテと出逢ってからの七年間、辛い事も苦しい事も沢山ありましたが、あの子と同じ時を過ごせて、私は本当に幸せでした。全ては、殿下が私達とミートリッテに生きていける場所を与えて下さったからに他なりません。感謝こそすれ、恨む筋合いが何処にありましょう。この上、死が訪れるまで共にと願うのは、分不相応というものです。……ただ……」
「ただ?」
「……急すぎる別れに、心を整理する時間をと望んでしまうのは……贅沢でしょうか……?」
ほんの少し上向いた頬を伝い、顎から地面へ滑り落ちる月色の滴。
声は微かに震えているものの、王子と目を合わせたまま少しも姿勢を崩さず、泣き喚きもせず、静かに微笑むハウィスに、王子もまた、ふわりと優しく目を細めた。
「なあ、ハウィス。権利は主
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