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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十七話 転機
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か言い始めた。

余計な御世話だ、そんな事はとっくに分かっている。腹が立ったが無視することにした。こんな阿呆の事はどうでもいい、俺には考えなくてはならないことが有る。

第二百十四条を進言したのは止むを得なかった。ロボスは明らかに総司令官に必要な冷徹さを失っていた。俺の撤退案を使わないと言うならそれも良い、フォークの提案を使うと言うならそれをもっと詰めるべきだった。冷静さを示すべきだったのだ。それなのに自分の願望を優先した。

そして現実と願望が一致しなくなったとき、それでも願望を優先させようとした。あのまま戦い続ければロボスは勝算も無しに陸戦隊を要塞内へ次々と送り続けただろう。

そして要塞の外では要塞への突入口を確保するために同盟軍と帝国軍が激しい戦いを行うことになったはずだ。損害ばかりが増え、終結の見通しのつかない戦闘が延々と続いただろう。場合によってはその戦闘の中で味方殺しが起きたかもしれない……。

敵味方共に損害は軽微か……。悪くない結果だ、敵艦隊に大きな損害を与えていれば陸戦隊の撤退を疑問視する人間が出る。逆にこちらが損害を受けていれば解任そのものを疑問視する人間が出るに違いない。損害は軽微、両者とも出辛い状況だ。

ヤンとワイドボーンは混戦状態を作ることで撤退作戦を援護しようとした。だがそれでは駄目なのだ。混戦状態は消耗戦になる、当然被害は大きい。そして味方殺しをミュッケンベルガーが実施すればさらに被害が大きくなる。撤退そのものが非難されるだろう。陸戦隊を見殺しにした方が損害が少なかったと言われるに違いない。結果論としてロボスは正しかったと言われかねない……。

ミュッケンベルガーが味方殺しをしたかどうかは分からない。やったかもしれないしやらなかったかもしれない……。しかしミュッケンベルガーは追い込まれていた。味方殺しをした可能性は有る、それを防ぐには混戦状態は作り出せない、十分な理由だ、皆が納得するだろう。

問題は消極的に過ぎると言われた場合だ。当然非難は撤収を進言した俺に向かうだろう。亡命者だから帝国軍との戦いを避けたのではないかと言う奴が必ず出る。少なくともロボスやフォークならそう指摘する。

だから撤退作戦を指揮する必要が有った、イゼルローン要塞に行く必要が有った。最前線で味方を救うために危険を冒す。これなら消極的だと非難は出来ない。キスリングが居た事だけが予想外だった。

キスリングを救うには直接ラインハルト達に頼むしかなかった。危険ではあったが勝算は有った。彼らが嫌うのは卑怯未練な振る舞いだ、そして称賛するのは勇気ある行動と信義……、敵であろうが味方であろうが変わらない。大体七割程度の確率で助かるだろうと考えていた。

バグダッシュとサアヤがついて来たのは予想外だったが、それも良い方向
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