外伝『魔弾と聖剣〜竜具を介して心に問う』―中章
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さない。二人のやり取りを『隙』とみた黒船は、動力に物言わせる航行速度
で一気に距離を詰めてくる。
黒船の真っ白い潮吹が、天高く舞い上がる。『機械仕掛けの魔弾』を撃墜された怒りなのか、もう勝利を約束したかのような『勝鬨』なのかはわからない。あるいは、その両方――
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「礼など言いませんわ。あれくらい自分で何とかなりましたのに」
「そいつは余計なお世話でしたな。失敬」
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そっけなく返事をヴィッサリオンに返してくれるあたり、雷禍の戦姫は特に『黒船』への恐怖は抱いていないようだ。むしろ、黒髪の傭兵は閃姫の雷鳴に触れてしまった黒船へ、哀れみさえ送りたい気分だった。雷禍の竜の逆鱗にもふれたのかもしれない――
しばらくすると、青年と戦姫の間に『空間』を割って入るもう一人の戦姫が遅れて現れた。驚くよりも先に、侮蔑を一本差し入れする。
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「音よりも速い弾に対応できなかった娘が、よくもその口をきけたものだな」
「虚影の幻姫……貴女という人は!」
「二人とも、落ち着いてください」
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何とか戦姫二人をなだめようとするヴィッサリオンの表情は苦い。仕方がない。何しろ、一騎当千の戦姫が睨みあっている為、肌にびりびりと伝わるその威圧感が半端じゃない。雷禍の戦姫もまた『竜姫将』の一人なのだから――そして、煌炎の戦姫も例外なく『竜姫将』ということを。
ともかく、黒船撃退への道筋を得るには、この二人の戦姫の協力が欠かせない。頭が痛くなる思いを抑えて、ヴィッサリオンは二人に告げる。
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「もう『鉄』で覆われた黒い船はそこまで来ていますよ。今のうちなら『旋回』で回り込めるはずです。おそらレグニーツァは行動を起こされているかと」
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確かに、ヴィッサリオンのいう通りだった。彼の指さす水平を戦姫二人が見やる。
先ほどの軍議で話し合った通りに事は進みそうだ。どうやらあの黒船は『速度』に『旋回』能力を奪われていて融通など利いていないようだ。
この好機、偶然であったにせよ、我々が風向きをつかんでいる好機、そしてこの瞬間を逃す手はない。こちらを上回る速度であるにも関わらず、あの黒船はむしろ振り回されているように見えた。
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(どんなに立派な『玩具−ブリキ』でも、正しい運用を行わなければ壊れた時の『保障』はきかないぞ)
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軽くため息をついたヴィッサリオンは、心の中で黒船の搭乗員にそうつぶやく。
黒船接触まで――約700アルシン。
先ほどの『音よりも速い砲弾』と、黒船の速度を推し量って、到達時間を予測するのは容易だ。ただ、回り込む判断時間を誤っては、あの海のように、この作戦が全て水泡となる。
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「ヴィッサリオン。貴様は確か、『カンセイノホウソク』といったな」
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